永遠の伴侶(改定前)

白藤桜空

文字の大きさ
63 / 91
華は根に、鳥は古巣に帰る

63

しおりを挟む
 ある晴れた日の昼下がり。今や日常となった血みどろの戦いの最中さなか美琳メイリンの目の前で異変が起こった。
「何……? なんであいつら急に方向転換してるの……?」
 戦の真っ只中であるというのに、土煙を立てて去っていくガン兵。しかも移動に手間取る投石機まで運びながら。
 突然のことにシュウ兵たちは面食らう。こちらのことを振り返ることなくまっすぐに撤退して行く彼らを、美琳らは呆然と見守るしかなかった。
「ちょ、ちょっと、護衛長。何が起きたの?」
 美琳は困惑しながら浩源ハオヤンの馬車に近付く。が、浩源も答えを持ち合わせていなかった。
「私にも何がなんだか…………」
 そこまで言ったところでふと気づき、浩源は兵たちに向かって叫ぶ。
「皆さん! このまま待機してください! 罠の可能性もありますので、各々休憩を取りながら警戒しなさい!」
「はッ!」
 兵たちは大声で応える。そして周囲を警戒しつつも、その場で体を休めるのであった。



 ――――それから夕焼けで空が真っ赤に染まる頃になっても、剛軍が戻ってくることはなかった。
 この時間まで何も起こらないのであれば流石に大丈夫だろう、ということになり、修軍は陣営に戻ることにした。
「一体なんだったの?」
 撤退する道中、美琳は訝し気に剛軍が消えた方向を見つめる。
「まだ何とも言えませんが……あれ程の慌てぶりは只事ではないでしょうね」
「ふぅん」
 と、美琳は聞いておきながら大して興味はなさそうである。
「ねえ、このまま戻って来なかったらどうなるの?」
「それもまだ分かりませんね。ただ、間諜ジァンディエからの情報次第では終結したと考える可能性も出てきますが」
「どうして?」
「前にお話しした雪峰シェンフォン殿なのですが……あれからめっきり姿を見せず、都城とじょうで何か兵が必要なことが起きたのではないかと…………いや、もしくは……」
 浩源が言葉を濁したのを、美琳は小首を傾げて聞く。
「もしくは、何?」
「何かをのではないか、と」
「起こした……」
 二人の言葉は薄暗い夜に吸い込まれていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Millennium226 【軍神マルスの娘と呼ばれた女 6】 ― 皇帝のいない如月 ―

kei
歴史・時代
周囲の外敵をことごとく鎮定し、向かうところ敵なし! 盤石に見えた帝国の政(まつりごと)。 しかし、その政体を覆す計画が密かに進行していた。 帝国の生きた守り神「軍神マルスの娘」に厳命が下る。 帝都を襲うクーデター計画を粉砕せよ!

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

大奥~牡丹の綻び~

翔子
歴史・時代
*この話は、もしも江戸幕府が永久に続き、幕末の流血の争いが起こらず、平和な時代が続いたら……と想定して書かれたフィクションとなっております。 大正時代・昭和時代を省き、元号が「平成」になる前に候補とされてた元号を使用しています。 映像化された数ある大奥関連作品を敬愛し、踏襲して書いております。 リアルな大奥を再現するため、性的描写を用いております。苦手な方はご注意ください。 時は17代将軍の治世。 公家・鷹司家の姫宮、藤子は大奥に入り御台所となった。 京の都から、慣れない江戸での生活は驚き続きだったが、夫となった徳川家正とは仲睦まじく、百鬼繚乱な大奥において幸せな生活を送る。 ところが、時が経つにつれ、藤子に様々な困難が襲い掛かる。 祖母の死 鷹司家の断絶 実父の突然の死 嫁姑争い 姉妹間の軋轢 壮絶で波乱な人生が藤子に待ち構えていたのであった。 2023.01.13 修正加筆のため一括非公開 2023.04.20 修正加筆 完成 2023.04.23 推敲完成 再公開 2023.08.09 「小説家になろう」にも投稿開始。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

【受賞作】小売り酒屋鬼八 人情お品書き帖

筑前助広
歴史・時代
幸せとちょっぴりの切なさを感じるお品書き帖です―― 野州夜須藩の城下・蔵前町に、昼は小売り酒屋、夜は居酒屋を営む鬼八という店がある。父娘二人で切り盛りするその店に、六蔵という料理人が現れ――。 アルファポリス歴史時代小説大賞特別賞「狼の裔」、同最終候補「天暗の星」ともリンクする、「夜須藩もの」人情ストーリー。

処理中です...