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41 【2年前】(18)
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サキがエトウとタジマに会った月末から、10日経とうとしていた。気温はさらに暑くなり、そろそろエアコンが欲しい季節だ。ソーラーパネルか発電機をもう一台手に入れたいという話が事務室で上がるような時期だった。
その日、レンの所属する第3チームは中央線ぎりぎりの警備をしていた。このエリアのバリケードやトラップは完成しているが、高架を包み込むように建つガラス張りの旧駅舎の上には敵陣営の者の姿がチラつく。
上から銃撃されないように注意しながら、タケとレンは路線沿いを巡回していた。シフトで順番にバディを組まされる以上、定期的にこうして2人になるのを避けることはできない。
少し距離を開けて、レンはタケの後ろをついて行く。11時を回り、そろそろ昼ご飯のことを考える時間帯だった。
駅の下、かつて人が通り抜けるコンコースだったところは、鉄板やありあわせの建材で塞いである。タケは上をざっと見渡してから、行き止まりのトンネルのようになったその場所へ入っていった。
レンも同じように足を踏み入れる。陽射しがきつくなってきていたが、日陰に入ると、ほっとする。全身が陰に入った途端、奥から静かな声がした。
「レン、そういえば、さ」
「はい」
「この間のこと、考えてくれたかなって」
やっぱりな。レンは心の中で溜息をついた。
「考えましたけど……やっぱり」
「ちょっと前に、おれ見たんだけど」
「何を?」
薄暗い空間の中、壁の状態を確認していたタケが、ゆっくりと振り向く。微かな怒りの気配。冷たい声がトンネルを吹き抜ける。
「嘘つきはお前だったんだな。図書館の奥で、サキさんに抱かれて寝てただろ」
レンの体がぎくりと強張った。ガラス玉のような目がレンを見ていた。
何か言おうと口を開きかけたその瞬間──ドォンという耳をつんざく爆発音と共に壁が吹っ飛び、タケとレンの体は地面に叩きつけられた。
あぁ……始まってしまった。
黒いものに意識を鷲掴みにされ引きずりこまれる一瞬、レンが思ったのはそれだけだった。
その日、レンの所属する第3チームは中央線ぎりぎりの警備をしていた。このエリアのバリケードやトラップは完成しているが、高架を包み込むように建つガラス張りの旧駅舎の上には敵陣営の者の姿がチラつく。
上から銃撃されないように注意しながら、タケとレンは路線沿いを巡回していた。シフトで順番にバディを組まされる以上、定期的にこうして2人になるのを避けることはできない。
少し距離を開けて、レンはタケの後ろをついて行く。11時を回り、そろそろ昼ご飯のことを考える時間帯だった。
駅の下、かつて人が通り抜けるコンコースだったところは、鉄板やありあわせの建材で塞いである。タケは上をざっと見渡してから、行き止まりのトンネルのようになったその場所へ入っていった。
レンも同じように足を踏み入れる。陽射しがきつくなってきていたが、日陰に入ると、ほっとする。全身が陰に入った途端、奥から静かな声がした。
「レン、そういえば、さ」
「はい」
「この間のこと、考えてくれたかなって」
やっぱりな。レンは心の中で溜息をついた。
「考えましたけど……やっぱり」
「ちょっと前に、おれ見たんだけど」
「何を?」
薄暗い空間の中、壁の状態を確認していたタケが、ゆっくりと振り向く。微かな怒りの気配。冷たい声がトンネルを吹き抜ける。
「嘘つきはお前だったんだな。図書館の奥で、サキさんに抱かれて寝てただろ」
レンの体がぎくりと強張った。ガラス玉のような目がレンを見ていた。
何か言おうと口を開きかけたその瞬間──ドォンという耳をつんざく爆発音と共に壁が吹っ飛び、タケとレンの体は地面に叩きつけられた。
あぁ……始まってしまった。
黒いものに意識を鷲掴みにされ引きずりこまれる一瞬、レンが思ったのはそれだけだった。
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