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第21話 魂胆
しおりを挟む佐山が選んだのはLAでも有名な老舗スタジオ。世界三大ギタリストや伝説のバンドも使ってたというミュージシャンなら一度は訪れたい名所だ。
米国に来てから何か所か回ったスタジオのなかでも、ここが一番気に入ってた。
「そろそろ昼にしないか?」
満足いくまでさせてると、空腹も気付かずにやってしまう。これを言うタイミングは難しいけど、そこは一心同体なんで。
「ああ、そうだな。じゃあ、1時間休憩にしよう」
涼しいはずのスタジオなのに、佐山の体に汗が滲んでる。くせっ毛も湿気を帯びて余計にくるくるしだした。
ノースリーブから惜しみなく披露されている肩や腕の筋肉がきらりと輝いて、無駄にドキドキしてしまった。
「汗拭いてやるよ」
体を冷やすといけないのと、僕が発情するのを防ぐためにタオルで体を拭く。
「あ、サンキュー。むふふ」
「こら……」
僕の気持ちを知ってか知らずか、あいつはタオルごと僕を抱きしめようと腕を伸ばす。
「疲れたんだよ。いいだろ?」
「それは……いいけど」
おまえの魂胆はわかり過ぎるくらいわかる。ちらりとジェフを見ると、明らかにムッとしてる。でも、まあいいか。ジェフもそれを承知で揶揄ってんだから。
「いい匂いだ……」
僕の髪に鼻をくっつけて匂いを嗅いでる。犬かよ……。僕はあいつの逞しい胸に押し付けられて心臓が波打ってんのに。
「ほら、昼飯食べるぞ。テラスに準備してるから」
頬が熱い。上を向くと、あいつの柔らかな視線が注がれてるのに気づく。
――――キスしたい。
さっきまで繰り広げられた演奏に気持ちが動かされまくって苦しいほどだったんだ。心臓を鷲掴みするようなギター。奏でていた本人が僕に恋してくれてるなんて、信じられない幸福にため息が出るよ。
僕の気持ちが顔に出ていたのか、それとも純粋にあいつもしたかったのか、お約束の唇が重ねられた。
日本のようにケータリングでいつでも食べられるシステムは、ここでは適用できない。スタジオが古いから場所がないんだよね。
機器とかバスルームとかは新しいんだけど建物自体は古いままなんだ。でもそれこそが深い音を生み出す源だから、ここは変えられない。
で、ランチは近くのお店から出前を取ってテラスで食べる。今日はみんなのリクエストが多かったヘルシーサンドイッチ。ここでは予想以上にヘルシー志向が強い。みんなまだ若いし、スタイルを気にしてるんだね。
「お、これ美味いな。さすがみんなのおススメだけはある」
野菜たっぷりのサンドイッチを頬張りながら佐山が言う。
「でも、倫の作ったのが一番うまいけどな」
またそんな余計なことを……嬉しいけど。ホントにおまえは僕の狙い処を間違えないのな。思わず頬が緩んでしまった。
向こうのテーブルではメンバーの4人が楽しそうに話をしてる。みんな腕に覚えのある人たちだから初対面ではないようだ。
なんでもない他愛のない話(昼間からえっちなのもあった)をしてたけど、いつの間にか音楽の話になってる。それが気になったのか、佐山も参戦してそのままスタジオに向かっていった。結局みんな、音楽好きの音楽バカなんだ。
僕はその輪には入れないけど、一生懸命サポートするからな。キラキラした背中を見送りながら、そっと胸に手を置いた。
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