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第26話 映画の思い出
しおりを挟むショーンが映画が好きだと言うので、お勧めの映画を見に行った。
今ではほとんどの映画が世界同時公開だけど、マイナーな作品はまだまだ日本未公開のもある。今回はそんな映画を選んでもらった。
佐山が映画をあまり見ないので、一緒に行く人がいて良かった。
僕らはショーンの仕事が終わってから、軽食を取って映画館へと向かった。
「佐山さんとはもう長いんです……長いの?」
「ん? ふふ。もうすぐ丸3年かな。ライブハウスでナンパされたんだよ。僕は彼女と行ったのにあいつに一目ぼれしてさ」
映画が始まる前、退屈な宣伝を見ながらの会話。考えてみると、こんな話、他人にするのは初めてだな。これが所謂恋バナか? みぞおちあたりが痒くなるや。
「ええっ。リンはそっちだったんだ? 趣旨変えしたってこと?」
「そうそう。僕も自分で驚いたよ。まさか自分が男を好きになるなんてね。人生何が起こるかわかんないって思った」
「そうかあ。そういうこともあるんだ」
妙に納得して首を傾けるショーン。そう言えば、ショーンはストレートだよね?
「ショーンは恋人いないの?」
「えっ? いればリンに付き合わないよ」
「そりゃそうか」
「あ、いや。もしいても、全然付き合うよ。でも、今はいないなあ。好きって思う人もいなくて。学生時代は同じ日系の子と付き合ってた」
ショーンは僕より1個下の26歳。州立大学を出て企業勤めも経験したけれど、結局家業を継いだんだ。自然を相手にクリエイティブな作業をするのが楽しいって。
ウチの庭のデザインも彼のもので、今はメンテナンスをしてくれてる。僕は知らなかったけど、界隈では注目の若手ガーデンデザイナーなんだ。
「あ、そうだ。この間パーティで会ったジェフのこと覚えてる?」
ウチで開いたパーティー、ショーンに手伝ってもらった。その時、ジェフと鉄板焼きでの絡みがあったはず。
「ああ。あの焼きそば焼いてた」
「そうそう、あいつさ、ゲイのうえにアジア系好みでさ。何か言われなかった?」
お子様とか失礼なことを言ってたけど、口説いてたらさらに申し訳ない。
「ああ、いや。ボクのこと未成年って思ってたみたいだし、眼中にないよ、きっと」
「そう? まあ、もう会うことはないと思うけど……。ショーンが未成年に見えるのは仕方ないよ。僕だって間違えられる。日本人特有なのかな。佐山は絶対間違えられないけど」
「確かにっ」
めっちゃオッサンだもんな、あいつ。二人で笑ってるとお目当ての映画が始まった。所謂B級映画だけど、こういうのに当たりがあるんだ。
――――映画と言えば、あいつと一緒に行った時、ひどい目にあったなあ。
僕は画面を眺めながら、日本で映画に行った時のことを思い出した。
その映画は期待を完全に裏切る駄作で、僕も佐山も途中で退屈してしまった。それならさっさと帰ればいいのに、あいつと来たら。
――――やば……なんか思い出したらムズムズしてきた。
あいつは映画館が空いてて暗いのをいいことに、僕にやりたい放題したんだよな。キスくらいならまだしも、ファスナーを下ろしちゃうし……それから……あんなこともこんなことも……。
「ただいま、佐山どこにいる?」
映画の感想をショーンと語り合うのももどかしく、帰宅した。玄関の扉を開けると同時に声をかける。
「ああ? リビングに普通にいるが?」
聞かなくてもわかった。リビングからアコギの音が聞こえてた。
「なんだ、どうした? うわっ」
僕は勢いよくあいつに突進し、そのままキスしてソファーに押し倒す。
「はあ……ふぅ……今日見てたの、アダルト映画だっけ?」
「違うよ。いいから黙って抱け」
あいつに跨ったまま、僕は自らシャツを脱ぎ捨てる。
「ええ? いいの? じゃあ、お言葉に甘えて」
佐山は最初ぽかんとしてたけど、据え膳食わぬは何とやらで俄然張り切りだした。もう限界だった。おまえのせいだよ、ホントに。
僕は臨界点に達していた欲望を開放する。やっぱり映画館は鬼門なのかもしれないな。
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