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第66話 ベガス! その7
しおりを挟む高級ホテルのカジノらしく、ここではクラシックジャズを奏でるバンドが小気味よいリズムを刻んでる。
Tシャツだと肌寒いので、僕はラフなサマーニットに白パンツといった装いで勝負に挑む(大げさ)。
佐山は開襟の柄シャツにゆったりしたデニムを穿いてる。これでグラサンしたら、きっとどっかのやくざに見えると思う。あはは。
「あれ、おまえらはカードしないの?」
同じくどう見てもチンピラなジェフが、ぴったぴたのTシャツを着て、はみ出るような筋肉を惜しげもなく晒して現れた。
でも隣には未成年にしか見えないショーンがいるから何とも不可思議な絵面だよ。
「ああ、カードはルールが面倒で佐山は嫌みたい。もっぱらスロットマシンやルーレットといった勘が勝負ので遊んでるよ」
「へえ。ま、あいつの知能レベルなら仕方ないか」
「ほお、ではジェフはカードが得意だと?」
知能レベルって、おまえが言うな。同程度だろう、どう考えても。
「ジェフ、何言ってんだよ。ダウンタウンでも負けてたじゃない」
正直なショーンにバラされてる。
「な、何を言う。ちゃんとプラスにしたろ?」
「ボクがスロットマシンでね」
腹がよじれるよ。
結局、お互いが得意(好き)なゲームをしながら、タイミングのあったところで一緒に楽しめるクラップス(サイコロゲーム)で遊ぶことにした。
僕らがテーブルに付くと、カクテルウェイトレスが何度もやってくる。酒も進み、大学生のノリで大騒ぎ。それでも、凄く楽しくて、夜が更けるのも気付かなかった。
「あー。俺もう疲れたや。部屋帰って寝る。倫はまだ遊ぶ?」
「いや、僕もそろそろ瞼が重くて仕方ない」
「えー。もう寝るのか。まあ、おまえらは部屋でお楽しみがあるからなあ?」
日付が変わって1時過ぎ、まだまだ元気なジェフが僕らをニヤニヤしながら見ている。
「ば、馬鹿やろ。違うよ」
多分違わないけど。
「なんだよ。それはてめえも一緒だろうが」
「お、おまえらと一緒にすんな。ボケ」
ジェフの奴、柄にもなく照れてる。ショーンも真っ赤になってるや。
僕らはもう5日もここで遊んでる。まだ来たばっかりの二人とは同じに出来ないよ。もう30歳も目前だものなあ。
まだまだ元気いっぱいの二人はカジノの喧騒の中に戻っていった。
「年取ったかな……」
「ええっ!? いや、まあ確かに。でも、部屋にもお楽しみはあるし……な?」
なんてまたあいつが僕の腕を取りながらにまーっと笑う。おまえのそのスケベ顔にどきんと胸打つのも、もしかしたら歳取ったせいかもしれないな。
「お手柔らかに頼むよ」
「んん? どうすっかなあ」
「だっ! もう少し大事に扱えよっ」
エレベーターに二人吸い込まれるようにして入る。あいつは僕を両腕に抱き、そっと顎に手を掛けた。
「俺があんたを手荒に扱ったことあるか?」
わざとそんなふうに振る舞うことはあっても、大抵はフリをしてるだけだ。
時々暴走するときがないとは言えないけど、それでもおまえが僕を粗雑にしたことはない。
「わかってるよ……」
アパートのエレベーターが懐かしい。ここのはすぐに着いてしまう。それでもあいつは、僕の唇を諦めない。ドアが開けきるまで、熱いキスをくれた。
ドンドンッ! ドンドン!
「リン! サヤマ! 起きて!」
深夜、寝入った僕らの部屋のドアを叩く音が響いた。
驚いて飛び起きると、ショーンの切羽詰まった声が耳に飛び込んで来る。
それは、長い夜の開幕を告げるベルだった。
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