【R18】僕とあいつのいちゃラブな日々@U.S.A.

紫紺

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第86話 時間稼ぎ

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 レイモンドを介抱しようとスタジオから出たところで、僕らは襲われた。で、もってどっかの山小屋に連れてこられてしまった。
 僕は手足と口を縛られ、危機一髪の状態だ。

「こんなところに隠れていたのか」

 赤毛がエリクの背後からひょこっと顔を出して言った。手には買い物袋を持っているところを見ると、何か買ってきたのか。

「カルロ、その荷物置いてこい。さあ、姫君はこっちに来るんだ」

 エリクが僕の腕を乱暴に取って隙間から引きずりだした。後ろに縛られてる手首が痛む。

「ううっ!」
「あっと、痛かったか。でも怪我させるなとは言われてないからな」

 何だとっ。人質は大事にしろよ。しかし、今、カルロと言ったか。そうか、思い出した。

「うぐうぐっ!」

 くそっ。このさるぐつわ、何とかして取ってほしい。ついでに手足も自由にして欲しいけど。

「あれ、なんか言いたそうだな。これ外してやるか。ご奉仕もしてもらいたいしな」

 誰がご奉仕なんかするかっ。なんでもいいから、とにかく外せよっ。エリクはカルロから酒をもらい、飲みながら口を縛っていた布を取った。

「はあ、はあ。おまえら、なんの目的で僕をさらってきたんだ」

 やっと普通に息ができる。

「おや? 威勢がいいねえ」
「おーい、なんだべよ。見つかっだんなら教えてくれよ」

 どっかりと椅子に座るエリクのところに、二階に行っていた二人も戻って来た。床に転がされてる僕は図体のデカい四人組に見下ろされることになる。

「カルロ」
「な、なんだよ。おまえ、オレのこと覚えてたのか」

 赤毛が自分の名前を呼ばれ、驚いている。そう。こいつ、パーティーの時、僕をバスルームで襲おうとした下手くそギタリストだ。

「君ら、ビルに報酬ももらわずに誘拐なんてことしたのか?」

 四人はそれぞれ顔を見合わせる。アホの二人は何のことって感じでエリクの顔を伺う。

「エリク、ごいつ何言ってるだ? おめえ、金もらっでんだべ?」
「いいか、僕は日本国に税金を払ってる、れっきとした日本人だ。佐山は有名人だし、これは国際問題になるっ」

 これは間違いのない事実だ。こいつら事の重大さをわかってないんじゃないか?

「こ、国際問題って……大げさな」

 だみ声が少し怯んでる。

「こくさいもんだいっでなんだべ?」

 アホは黙ってろ。僕は一番賢そうな赤ら顔の男に向かって言った。

「おい、エリクっての。ビルに連絡取ってみろよ? とっくにおまえらを騙して、逃げたんじゃないのか?」

 再び顔を見合わせた。これははったりだけど、なんだか妙だ。嫌がらせにもほどがある。

「どうする……?」
「カルロ、君だって腐ってもミュージシャンだろ? こんなことしでかして、ステージに上がれなくなってもいいのか?」
「く、腐ってもとか言うなっ」

 動揺してる。僕だって今までマネージャーとして、色んな相手と渡り合ってきたんだ。
 口八丁じゃないけど、何とか時間稼ぎだけでもしたい。きっとそのうち、佐山が助けに来てくれる。あいつのことだ。今だって死に物狂いで僕のことを探してくれているはずだ。多分……。

「電話通じねえ」

 エリクが吐き捨てるように言った。

「なんだとっ! どういうことだよっ」
「エリク、どうなっでんだべっ」

 電話が通じない。マジか……。四人がオロオロとしだした。チャンスだ。

「ほら、君らは嵌められたんだよ。悪いこと言わない。僕を今すぐ解放してくれたら、なかったことにしてやるよ(嘘だけど)」

 スマホ返してくれたら、すぐに佐山に連絡する。今、何かの理由でビルは電話が取れないだけかもしれない。だから、今すぐ僕を解放してくれ。

「エリク、どうする?」

 この一味のリーダー格はエリクだ。カルロは一味というか、飛び入り参加程度なんだろう。

 ――――吉と出るか……下手すりゃ殺される……。

 殺されるかも。そうふと頭によぎっただけで、僕はぶるっと体が震えた。あいつにもう二度と会えなくなるかもしれない。そう思うと涙が出そうになる。
 歓喜の輪のなかで、幸せそうに笑っていたあいつの姿。あれが最後なんて信じたくない。

 ――――絶対生き延びてやる。佐山とこのままお別れなんて許さない。




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