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TAKE 58 記者会見 1
しおりを挟む17時ちょうど。僕と東さんは病室のテレビの前で固唾を飲んでいた。
たくさんの報道陣の前に据えられた、白いクロスを被せたテーブル。その記者会見場に、スーツにネクタイ姿、年配の紳士が二人着席している。
「右側は事務所の広報の……澤田部長さんですね。もうお一人は弁護士さんかな」
東さんが隣で独りごとのように呟いた。僕も無言で頷く。
「あ……」
一斉にフラッシュが焚かれる。その中を濃紺のスーツを纏った享祐が登場した。こんなときになんだけど、めっちゃカッコいい。
シャツもネクタイもダーク色なのは、この記者会見を意識したんだろう。神妙な顔つきはこの会見に臨む享祐の心を移している。僕の胸は今にも破裂しそうになった。
「お集まりいただきありがとうございます」
広報の澤田部長さんが記者会見の始まりを告げ、自己紹介をした。隣はやはり弁護士で、風間と名乗った。
澤田さんから事件の経緯や現状などを報告し、被害者の僕や事務所、ファンの方々等々にご迷惑をおかけしましたと謝罪があった。
経緯について、澤田さんは以前から加害者『有松若菜』の存在を、事務所側が把握していたと話した。過激ではないにせよ、濃密なアクションを起こすファンの一人だったと。
それが、今回の僕とのスキャンダルが出た頃から、事務所にこの噂を否定するようにとのメールが何度も届くようになったと言う。
――――そんなことがあったなんて。全然知らなかった。
「彼女が越前享祐の自宅(つまり僕の自宅でもある)に、時々現れるようになったのも存じておりました。ですので、越前には常に送迎を付けていたのですが……。まさか、三條さんに危害が及ぶとは考えておらず、痛恨の極みです」
ううむ。でも、ウチも最大限注意してたしなあ。あの事件は、不可抗力だと思うんだけど。
僕が複雑な表情をしてたのだろうか、東さんがちらりと僕を見て。
「ウチの事務所だって送迎してましたよね?」
「いや、誰も責めてないよっ?」
なんて言うもんだから、慌てて否定した。
「私からの話は以上です。越前君……」
申し合わせたように、広報の澤田さんが首を横に向けて享祐を見た。享祐もそれに応じて自然に一つ頷く。
――――享祐の番だ。
僕が息を呑むのと同時に、テレビはフラッシュの音と光で溢れる。真正面にそれを見据えた享祐の表情がアップにされる。僕はそれだけで気が遠くなりそうだった。
「まずは謝罪の言葉から始めさせていただきます。大変な怪我を負った三條伊織さんには本当に言うべき言葉も見つからないほど申し訳なく思っています。
僕の……この世で一番大切な人を傷つけてしまった。彼を守れなかったことに、僕は今ほど悔しくて情けない気持ちになったことはなかった」
えっ!? なにっ?!
一瞬の沈黙。直後、テレビ画面の向こうで大きなざわめきが起こった。
不思議なことにテーブルの後ろに並ぶ三名は身じろぎもしない。ついでに言うと、隣の東さんからは小さなため息が聞こえて来た。
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