【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺

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第16話 冗談

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 2時間ほどかかったけど、なんとかまとめることが出来た。晄矢さんは来客との打ち合わせで部屋にはいない。
 ふと気づくと、ガラスの向こうで何人かの弁護士らしき人や秘書さんが歩きながらこちらを覗いている。そうか。僕が何者か気になってんだよね。

 ――――まさかここで、恋人とは言ってないよね……。

「終わったか?」

 晄矢さんが戻って来た。僕は抽出したものと元のデータを見せた。

「あ、いいね。さすがだ」
「良かった……でも時間かかりすぎですよね」
「そんなことはない。思ったよりずっと早かったよ」

 褒められた。嘘でも嬉しいっ! 僕はほっと安堵の息を吐くと、晄矢さんは僕の頭をごしごしとなぜまわした。

「あ、あの……」
「どうした?」
「僕はここの皆さんにはどう思われてるのかな……」

 ガラスの向こうから好奇の視線を感じる。自意識過剰だろうか。

「ああ、それね。うちの書生ってことになってるよ。法科の苦学生だから、うちで面倒みてるって。うちが面倒見るなんてよっぽど有望な学生なんだと評判だ」
「そんな……荷が重い……」
「ははっ。気にすることはない。人のうわさなんて勝手なもんだし、涼はまだ2年生だからな」

 晄矢さんは裏のない笑顔で言う。それは確かにそうだけど……。

「それとも不満か? 恋人だって言ってもいいよ」
「ば……馬鹿なこと言わないでくださいよ」
「冗談だよ。そんなこと言ったら、各階の受付や独身の秘書嬢に加えて若手アソシエイト共が暴動起こすよ」

 今度はウンザリとでもいうような表情で肩をそびやかす。暴動は言い過ぎだろうけど、あながち的外れでもないのかも。
 やっぱりこの事務所にいる独身女性は、少なからず玉の輿を狙っているのだ。

「さ、腹減ったな。なんか食べに行こう」
「もう帰れるの?」
「いや、残念ながら。8時から人に会う」

 そうか。やっぱり忙しいんだな。

「そんな顔して……寂しい?」
「え? ど、どんな顔してました?」

 寂しそうな顔してたのかな。僕は慌てて自分の顔に手を当てる。

「あはは! ほんとに涼は可愛いな。本気で好きになりそうだ」

 笑いながら、でも最後は真剣なまなざしで言う。僕は心臓を撃ち抜かれたみたいにどくんとした。だけど、これは彼の悪い冗談なんだ。

「はいはい。寂しいですよ。広いベッドで一人寂しく寝てますよ」

 なんて軽口をたたいた。でもなぜか返しがない。思わぬ沈黙に僕は晄矢さんの顔を覗く。

「誘うなよ……本気になるから」
「え……」

 笑いのない表情に僕は後ずさる。一体どうしたらいいんだ。彼の気持ちがとことんわかんないよっ。
 
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