【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺

文字の大きさ
40 / 111

第39話 初めての接待

しおりを挟む


 金曜日の夜。晄矢さんたち弁護士先生方は大物クライアントさんの接待があるらしく全員出払っていた。城南みたいな大手なら、よくあることなんだろうなあ。

 僕の目標は、名古屋市内の弁護士事務所で修行させてもらってから、地元の岐阜で自分の事務所を開設することなんだ。僕がばあちゃんと住んでたところは人口密度が低いとこだけど、市内ならそこそこ需要あると思うんだよね。

 いつも通り試験勉強してたら、スマホがブルブルと振動している。また広告のアプリかと思っていたが、晄矢さんからの着信だった。

「はい。どうかした?」
『あ、涼。すまない……』

 いきなり謝られた。なんだろ。それになんか後ろが賑やかだ。

『親父がどうしてもおまえを連れてこいって言うんだ。クライアントの前で紹介するからって』

 えええっ! それ、どういうこと? クライアントにどう紹介するんだよっ。

「それ、どういう」
『当然、親父の嫌がらせだよ。うちに今、優秀な書生がいる。って自慢しだしてさ』

 どうやら祐矢氏は、晄矢さんの前で僕に恥をかかせたいようだ。全くよくやるよ。どうせ田舎者の貧乏人が、ハイソな場所じゃ何もできないと見せたいんだろうな。言う通りだけど。

 ――――でも、断ることはできないんだろうなあ。

「わかった。すぐ準備していくよ」
『すまん。立花が送っていくから』
「うん。ねえ、晄矢さん」
『どうした?』
「もし……もし僕がヘマしたら、解雇してくれていいからね。正直自信ない」

 少しの間。スマホの向こうで大笑いする男性と女性の声が聞こえていた。だいぶ出来上がってそうだ。

『馬鹿だな。確かにまだ雇用関係は結んでるけど、たとえそれが終わっても、おまえが俺の恋人だってのは終わらない。むしろ始まったばかりだからな』

 うおっ……今度は僕が何も言えず、息を呑んでしまった。

『とにかく、来てくれると助かるよ。詳しいことは立花から聞いてくれ』
「あ、うん。了解」

 通話を切ってバタバタ用意しているとノックが。立花さんだろうか。

「はい。どうぞ」
「晄矢さんから連絡ございましたか?」

 三条さんだった。この人、早朝から夜遅くまでいるよな。うっかりしてたけど住み込みなのかも。

「はい。さきほど……」
「ご準備手伝いますので、こちらへいらしてください」

 と、スタスタ寝室に入っていくとクローゼットの前で腕組をする。スーツは三着しかないけれど、僕ではどれを着て行けばいいのかわからなかった。晄矢さんはこんなところまで気を回してくれるんだ。

「皆さんは高級クラブにいらっしゃるようなので……こちらにしましょう」

 高 級 ク ラ ブ。一文字ずつ開けたのはミスじゃない。僕の頭の中を表したんだ。こんな感じでインプットされた。
 想像もできない世界だ。ばあちゃんが時々見てたドラマでしか知らない世界(一応テレビはあった)。なんか綺麗な女の人が容積率の低いドレスを着てお酒を飲んでた。

 ――――その隣には、大概酔っぱらった腹の出たおっさんがいたのだが。スーツの胸ポケットに派手なチーフ入れたような……。

 なんていう歪んだ知識しかないが、とにかく言われたように着替える。天パーで言うこと聞かない髪も、三条さんは綺麗に撫でつけてくれた。

「行きましょう。皆さまお待ちです」

 玄関に行くと、エントランスで立花さんが待っていた。少し表情が硬い。やはり僕は恐ろしい場所に向かうようだ。

 百鬼夜行にふさわしい月のないどんよりと湿った夜。僕は何も言わず黒いワンボックスカーに乗り込んだ。



しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

地味メガネだと思ってた同僚が、眼鏡を外したら国宝級でした~無愛想な美人と、チャラ営業のすれ違い恋愛

中岡 始
BL
誰にも気づかれたくない。 誰の心にも触れたくない。 無表情と無関心を盾に、オフィスの隅で静かに生きる天王寺悠(てんのうじ・ゆう)。 その存在に、誰も興味を持たなかった――彼を除いて。 明るく人懐こい営業マン・梅田隼人(うめだ・はやと)は、 偶然見た「眼鏡を外した天王寺」の姿に、衝撃を受ける。 無機質な顔の奥に隠れていたのは、 誰よりも美しく、誰よりも脆い、ひとりの青年だった。 気づいてしまったから、もう目を逸らせない。 知りたくなったから、もう引き返せない。 すれ違いと無関心、 優しさと孤独、 微かな笑顔と、隠された心。 これは、 触れれば壊れそうな彼に、 それでも手を伸ばしてしまった、 不器用な男たちの恋のはなし。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。

黒茶
BL
超鈍感すぎる真面目男子×謎多き親友の異世界ファンタジーBL。 ※このお話だけでも読める内容ですが、 同じくアルファポリスさんで公開しております 「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」 と合わせて読んでいただけると、 10倍くらい楽しんでいただけると思います。 同じ世界のお話で、登場人物も一部再登場したりします。 魔法と剣で戦う世界のお話。 幼い頃から王太子殿下の専属護衛騎士になるのが夢のラルフだが、 魔法の名門の家系でありながら魔法の才能がイマイチで、 家族にはバカにされるのがイヤで夢のことを言いだせずにいた。 魔法騎士になるために魔法騎士学院に入学して出会ったエルに、 「魔法より剣のほうが才能あるんじゃない?」と言われ、 二人で剣の特訓を始めたが、 その頃から自分の身体(主に心臓あたり)に異変が現れ始め・・・ これは病気か!? 持病があっても騎士団に入団できるのか!? と不安になるラルフ。 ラルフは無事に専属護衛騎士になれるのか!? ツッコミどころの多い攻めと、 謎が多いながらもそんなラルフと一緒にいてくれる頼りになる受けの 異世界ラブコメBLです。 健全な全年齢です。笑 マンガに換算したら全一巻くらいの短めのお話なのでさくっと読めると思います。 よろしくお願いします!

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音
BL
 魔道士はひ弱そうだからいらない。  そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。  そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、  ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

処理中です...