【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺

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第48話 ゴルフコンペ・クライシス 2

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 僕が小学生の頃、よくやっていたバイトはゴルフ場のボール拾いだった。これは時間給でなく取れ高なので、ボールをいかに早くたくさん見つけるかが勝負だ。

 キャディーや清掃係の下請けみたいな仕事だけど、近くにある三つのゴルフ場を順番に回れば結構お金になった。
 なかでも、お客さんがどうしても取り返したいような高いボールは単価がよかった。僕にしてみれば、どうしてそんな高価なのを使うのか理解に苦しんだけど。

「あ、これだな。黛さんのMにハートマーク」

 彼女が使用していたのも、もちろん新品で高級品だ。林の中に流れている小川にボールは入っていた。僕はボール探しのプロなんだから、こんなの朝飯前さ。


 既に十五ホールのグリーン上にいる一行を探す。

「ありがとうー。 本当に早いわね」
「はい。小川に落ちてたので……ボールは避けておきますね」

 濡れたボールは今日使うのは得策ではない。

「君はなんでも一流だな。益々ファンになったよ」
「あら、社長。彼は私の担当になってもらいますからね」

 憎々し気な祐矢氏を後目に、二人には滅法気に入られてしまった。正直、過ぎるのは困ってしまう。
 ただ、チームとしてのスコアはいい感じだ。ハンデを差し引いても上位に行けるんじゃないかな。

「ボール探しで浮かれるな。そんなもんは、弁護士のスキルになんの足しにもならん。貧乏自慢に過ぎんわ」

 他の三人に聞こえないように祐矢氏に言われた。晄矢さんに聞かれなくてよかったよ。聞いてたら激怒して、このパーティーがぶっ壊れちゃう。

「はい。心得ています。黛様の笑顔に免じてお許しください」
「む……まあ、そうだな……」

 あれ、なんだろ。皮肉のつもりだったのに、あっさり引き下がった?

 その後、順調に十八番までまわりホールアウトした。空の方の雲行きが怪しくなってたので、降られる前に上がれて良かった。

 ――――あ、やっぱり降って来た。

 早めに上がった参加者が表彰式会場でわさわさしてるとき、大粒の雨がガラス張りのロビーを打ち始めた。辺りはあっという間に大雨に見舞われてる。

 ――――みんな上がれたかな……雷雨になると危険だ。

 その時、ホールアウトしてきた一団が騒ぎ出した。僕と一緒に居た晄矢さんや藤堂社長が何事かと首を伸ばす。

「どうして、ボールを探さずに上がるんだ。あれは大事なものだと言ってるじゃないかっ!」
「ご辛抱ください。雷雨になったら危険です。止みましたらすぐに探しに行きますから」
「何言ってるんだ。あそこには川が流れてたぞ。池まで流れたらどうすんだ。キャディーに行かせればいいだろっ!」

 どこの馬鹿だよ。そんなに大事なボールなら家で飾っておけばいいだろうに。
 その人は今朝の開会式であいさつしてた人だ。お腹が太鼓腹の六十代くらいかな。頭は俗にいうバーコード。確か霞が関か……永田町の住人だったかな。

「あ、黛さん、ちょっとっ。さっきボール探してもらってたよね。すぐ見つかったって喜んでただろ。私らの前だったから見てたけど」

 知り合いだったのか、黛さんが声をかけられあからさまに迷惑顔をした。ボール探しって僕のことか……嫌な予感しかしない……。

 クラブハウスの外は、激しい雨が打ち付けてる。騒ぎを聞きつけた参加者が、遠巻きに喧噪を眺めていた。



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