【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺

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番外編 2 晄矢の初恋

前編

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 その日、宗次は俺に言った。司法試験に合格したら、名古屋に行くのだと。多くの弁護士の卵が目指す大手ではなく、小さな町の法律事務所で働きたいと。

「名古屋? なんで名古屋……」
「僕がお世話になるつもりの法律事務所がそこにあるんだよ。弁護士になりたいと思ったきっかけになった先生がそこにいる」
「そ……そうか。もう決めてたのか」

 大手法律事務所は、裕福な個人に向けた案件もあるが、ほとんどが企業向け。小口の民事や刑事事件はほとんど扱わなくなる。
 宗次は法を司る者として、一人ひとりの『人』と向き合っていきたいと、常日頃からそう言っていた。その決意を変えるはずもなかった。

 宗次と俺は大学で出会った。同じ法学部で同じゼミ。地方出身でサラリーマン家庭の宗次と俺では、共通項は弁護士志望なだけだったが、どういうわけか仲良くなった。
 いや、そうじゃないか。俺が接近したんだ。黒髪で日焼けした肌、快活に笑った。まだ少年のようでありながら強い目力のあいつに惹かれて。
 母が亡くなって以来、どこか投げやりだった俺には、あいつは眩しかったんだ。

 あいつは俺が城南の息子だと知っていても、全く態度を変えなかった。他の奴は媚びてくるか嫉妬してくるかのどちらかだったから、そこも俺は気に入った。友達と呼べる存在は、今でも宗次しかいない。



 だから、宗次を自分の家に招いたのも自然なことだった。家族に紹介したかったし、俺のことを知ってもらいたかった。
 それで怯んで去るような奴じゃないって知ってたから。

「宗次は弁護士になったらどうするんだ? 城南受けてみる?」

 1年生のころは、そんな話も冗談のようにできる余裕があった。

「ほお、それは僕をコネ入所させてくれるということか?」
「苦しゅうないぞ」

 なんて感じで。
 俺の将来は決まっているも同然だった。親父の事務所、城南国際法律事務所で弁護士として活動し、ゆくゆくはそこのパートナーとなる。
 弁護士としての仕事に誇りも持っていたし、別に不満はなかった。

「あはは! いやあ、ありがたいけど、僕は大手を目指してないんだ。晄矢みたいに社会を相手にする弁護士も憧れるけど……僕は地域の弁護士先生も必要だと思ってるんだ。
 法律をよく知らなくて騙されたり、悪に手を染めたり、そういう人を救いたい。以前、僕らも救われたから恩返ししたいんだ。随分と青臭いだろ」

 聞いたことがあった。弁護士を目指した理由。
 ご両親が土地売買の詐欺に引っ掛かりそうになり、寸でのところで助けられたのだと。だからこの理想はあいつらしい。

「じゃあ、俺もそれに付き合うぞっ! 晄矢&宗次法律事務所。カッコいいだろう?」
「何言ってる。それなら宗次&晄矢だ!」

 あの頃は、そんなふうにふざけ合うことができたんだ。



後編に続く
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