2 / 151
第2話 謎の男(謎の男視点)
しおりを挟むアスランが書店の前で、気落ちしている日本人に電話を借りようと悪戦苦闘している時、一人のめっちゃガタイのいい黒髪の男が、あり得ない場所を疾走していた。
――――アスラン、あんのく〇野郎! 俺を撒くなど100年早いわ!
サングラスをかけた黒髪男は屋上を駆け抜け、まるでアクション映画のようにビル間を飛んでいた。手にしたスマホをチラチラと見て、目標に接近中だ。
「ったく。電源落としたって無駄だ。俺らプロを舐めてんのか」
目標から距離にして数メートル。だがそれは、地上数メートルであって、横にしてみればほんの1メートルもない。
「え? なんだと……」
サングラス男の数メートル下には、数人のチンピラ風男達と2台のバイクがあった。
「おい、これ見ろよ。ゴールドカードだぞ!?」
「ええ? でもサインとか暗証番号ないと使えないだろう。それより時計だよ!」
「バッグも財布もブランドだ。さっさとコメキョー行こうぜ!」
その会話を耳にし、男は青くなった、多分。かなり日焼けしているので顔色は正直わからない。
「待て! おまえらっ」
男は屋上から停められていたトラックの屋根、それから地上へと着地した。体操競技なら満点に近い見事な着地だ。
「わっ! な、なんだよ。おまえ。どっから降ってきた?」
男たちは一様に後退りする。派手なシャツに染めた髪、首にはチャラチャラした金のネックレスをしている。中には成人前のような若いのもいた。
「おまえら、それを盗った奴はどうした。まさか……」
「え? あの外人の仲間なのあんた? それは気の毒したなあ」
「どうしたかなあ。まだ道路で寝てんじゃ……」
こいつらは哀れにも、アスランが金持ち外人であることがわかっても、目の前にした男がどれほど危険な人物かを知る手段がなかったようだ。
みなまで言う前に、時計を翳していた男は前歯を2本、確実に折られた。
「な、なにすんだ!」
真後ろにぶっ倒れた男を見て抗議の声を上げた若い男も、同じように地面に這いつくばることになった。未成年だと気付いたため、歯を折るのは許されたようだが、強烈な平手打ちを食らい脳震盪を起こしたのだ。
「ひ、ひええ!」
残りの二人は薄情にも逃げようと踵を返したが、双方の首根っこを両手でつかまれ、互いを頭突き。くらくらしたところを蹴り飛ばしてこれまた地面にうっ伏した。総時間、15秒といったところか。
――――あいつ、ちゃんと受け身は取ったんだろうな。反撃はさすがに、4人を1度に無理だったんだろうが。
男は彼らが落としたスマホやカバン、時計を拾い上げる。それからどこかに電話をかけた。
「あ、俺だけど。申し訳ない。アスランを探してもらえるかな。現地点から1キロ範囲内にいると思う。ああ、よろしく」
それは流ちょうなフランス語で語られていた。
43
あなたにおすすめの小説
【完結】俺とあの人の青い春
月城雪華
BL
高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。
けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。
ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。
けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。
それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。
「大丈夫か?」
涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。
おっさんにミューズはないだろ!~中年塗師は英国青年に純恋を捧ぐ~
天岸 あおい
BL
英国の若き青年×職人気質のおっさん塗師。
「カツミさん、アナタはワタシのミューズです!」
「おっさんにミューズはないだろ……っ!」
愛などいらぬ!が信条の中年塗師が英国青年と出会って仲を深めていくコメディBL。男前おっさん×伝統工芸×田舎ライフ物語。
第10回BL小説大賞エントリー作品。よろしくお願い致します!
僕を惑わせるのは素直な君
秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。
なんの不自由もない。
5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が
全てやって居た。
そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。
「俺、再婚しようと思うんだけど……」
この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。
だが、好きになってしまったになら仕方がない。
反対する事なく母親になる人と会う事に……。
そこには兄になる青年がついていて…。
いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。
だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。
自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて
いってしまうが……。
それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。
何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
Promised Happiness
春夏
BL
【完結しました】
没入型ゲームの世界で知り合った理久(ティエラ)と海未(マール)。2人の想いの行方は…。
Rは13章から。※つけます。
このところ短期完結の話でしたが、この話はわりと長めになりました。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる