王子様と一緒。

紫紺

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第2話 謎の男(謎の男視点)

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 アスランが書店の前で、気落ちしている日本人に電話を借りようと悪戦苦闘している時、一人のめっちゃガタイのいい黒髪の男が、あり得ない場所を疾走していた。

 ――――アスラン、あんのく〇野郎! 俺を撒くなど100年早いわ!

 サングラスをかけた黒髪男は屋上を駆け抜け、まるでアクション映画のようにビル間を飛んでいた。手にしたスマホをチラチラと見て、目標に接近中だ。

「ったく。電源落としたって無駄だ。俺らプロを舐めてんのか」

 目標から距離にして数メートル。だがそれは、地上数メートルであって、横にしてみればほんの1メートルもない。

「え? なんだと……」

 サングラス男の数メートル下には、数人のチンピラ風男達と2台のバイクがあった。

「おい、これ見ろよ。ゴールドカードだぞ!?」
「ええ? でもサインとか暗証番号ないと使えないだろう。それより時計だよ!」
「バッグも財布もブランドだ。さっさとコメキョー行こうぜ!」

 その会話を耳にし、男は青くなった、多分。かなり日焼けしているので顔色は正直わからない。

「待て! おまえらっ」

 男は屋上から停められていたトラックの屋根、それから地上へと着地した。体操競技なら満点に近い見事な着地だ。

「わっ! な、なんだよ。おまえ。どっから降ってきた?」

 男たちは一様に後退りする。派手なシャツに染めた髪、首にはチャラチャラした金のネックレスをしている。中には成人前のような若いのもいた。

「おまえら、それを盗った奴はどうした。まさか……」
「え? あの外人の仲間なのあんた? それは気の毒したなあ」
「どうしたかなあ。まだ道路で寝てんじゃ……」

 こいつらは哀れにも、アスランが金持ち外人であることがわかっても、目の前にした男がどれほど危険な人物かを知る手段がなかったようだ。
 みなまで言う前に、時計を翳していた男は前歯を2本、確実に折られた。

「な、なにすんだ!」

 真後ろにぶっ倒れた男を見て抗議の声を上げた若い男も、同じように地面に這いつくばることになった。未成年だと気付いたため、歯を折るのは許されたようだが、強烈な平手打ちを食らい脳震盪を起こしたのだ。

「ひ、ひええ!」

 残りの二人は薄情にも逃げようと踵を返したが、双方の首根っこを両手でつかまれ、互いを頭突き。くらくらしたところを蹴り飛ばしてこれまた地面にうっ伏した。総時間、15秒といったところか。

 ――――あいつ、ちゃんと受け身は取ったんだろうな。反撃はさすがに、4人を1度に無理だったんだろうが。

 男は彼らが落としたスマホやカバン、時計を拾い上げる。それからどこかに電話をかけた。

「あ、俺だけど。申し訳ない。アスランを探してもらえるかな。現地点から1キロ範囲内にいると思う。ああ、よろしく」

 それは流ちょうなフランス語で語られていた。





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