王子様と一緒。

紫紺

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第4話 ラメリアの王子様

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 アスランは地中海に浮かぶ美しい島、『ラメリア共和国』の第2王子、アスラン・ド・ヴォルヴォワールとか言うらしい(本当の名前はもっと長いらしいがカットした)。
 驚くなかれ、正真正銘の王族なのだ。とはいっても、知らない国だし、実感はない。そしてトーゴーはその護衛。護衛が撒かれちゃしょうもないが、まあ、これはアスランの方が悪いようだ(彼に物販の行列に並ばせておいて逃走した)。
 彼はそれでも、すぐにアスランの居場所を突き止めた。しかも、盗まれた時計やバッグを取り返して……。そっちの方が少し怖い。

「私は日本の漫画やアニメが大好きで。日本語はそれで勉強しました。トーゴーを専属の護衛に依頼したのも、彼が日本人だったからです」

 トーゴーは王宮の優秀なSPで、当然フランス語もペラペラ。ただ、アスランの要望で彼とは日本語で話しているらしい。

 ――――しかし、日本のサブカルチャー好きで日本に来たのか。ありきたり過ぎだよ。

 来日は初めてで、お忍びだったらしい。とはいえパスポートの関係で当然大使館には報せてあった。
 彼が迷子になったと電話したことで、飛んできたのは当たり前だった。

「それでは、アスラン様、ホテルまでお送りします」

 僕が親切な? 日本人であったことをアスランから聞いた大使館員たちは、平身低頭して詫びてくれた。別にいいけど。

「あ、いや。それはいいや」

 なんだか知らんが、アスランが大使館員たちと揉めている。さっさと車に乗ってホテルに戻ればいいものを。

 ――――どうでもいいか。僕には関係ないや。

 こうしていると、まるでお礼を待っているかのようだ。さっき名前と住所を聞かれて仕方なく答えたけれど、お礼が欲しいからじゃない。
 そんなもの……欲しくないとは言わないけど、大したことしてないしな。僕は関わりになるのもここまでと、今度こそ帰宅しようと踵を返した。

「ちょっと待ってくれ。あんた、田中、さんだったな」

 ところが、その肩をトーゴーに掴まれた。力は入れてないはずなのに、ビクリと全身が震える。

「な、なんですか? ぼ、僕はもう関係ないでしょう?」

 少々噛んでしまった。やはりSPというだけあって、迫力がある。無駄に男前なのも心臓に良くないよ。

「いえ、アスランが……あいつが、あんたの家に行きたいと言ってるので」
「へ? な、なにを言ってんですか!?」

 僕の家だと? なにを馬鹿なことを言い出したのか。自慢じゃないが、僕の家は古い賃貸アパートで、1DKのウサギ小屋だよっ。
 どこの国かは別にしても、王子様をお迎えするような場所じゃない!

「冗談はやめてください。ぼくんちはなんの特徴もないボロアパートですよ」
「まあ、それがいいんじゃない? 昭和荘っての聞いて、あいつの目が輝いていたんだよなあ。そこをきっと気に入ったんだよ」
「は?」

 確かに僕の住んでいるアパートの名前は昭和荘だ。昭和というくらいだから、築40年以上は普通に経ってる年代物。

 ――――どうして、そんなワードに胸をときめかすんだよっ!

 住所を聞かれた時、ご丁寧にそこまで言ってしまったことを、僕は深く後悔した。



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