王子様と一緒。

紫紺

文字の大きさ
8 / 151

第8話 王室のお仕事

しおりを挟む


 お茶を飲んで一服していると、アスランの荷物を持った大使館員がやってきた。スーツケース1つだけという指示に忠実に従ってくれたようだが、この世にこんなデカいスーツケースがあるのかと思うほどの大きさだった。

「これは要らないから、持って帰るように」

 アスランは僕の心の声を聞いたのか、それともここのキャパを考えてのことか、半分以上のものをスーツケースに入れたまま返していた。

「荷物はここに入れるといい」

 二間の押し入れの上部分半分をなんとか開けた。そこには僕の本を入れた段ボールが突っ込んであったんだ。

「ありがとう。ショウは読書家なんだね。本がいっぱいだ。それに私が読んだことない漫画もあるし」
「漫画良ければ読んでいいよ。あ、さすがに日本語を読むのは難しいか」

 自分の荷物を押し入れに入れながら、アスランは残念そうに頷く。

「話すのは随分上達したけれど、読むのはね。向こうで売ってる漫画は全部英語かフランス語に訳されていて、日本語版は見かけないんだよ」
「なるほど」

 彼の母国、ラメリア共和国はフランス語が公用語。政治は共和制で議会が執り行っている。国王のランス王を初め、王族は原則政治には関わらない立場を取っていると。
 この国の産業は主に観光だったようだけど、最近はレアアースが取れることがわかり、それが国力を上げているのだという。また、その土地はほとんどが王族が持っていた場所だったらしい。

「だから、この頃僕らは突然金持ちになってしまってね。と言っても、採掘や売買は国が統括してるから、儲けてるわけじゃないよ」

 だがそのおかげで、王族は税金ではなく、土地の貸し代と投資で生活できるようになったとのこと。国際交流や行事という公務は、もちろん積極的に行っていると言った。

「ま、僕はまだ学生だし、王太子(第1王子)の兄や姉たちにお任せしてるけどね」

 なので、呑気に日本旅行などできるわけだ。

「あの、ご近所に挨拶とか行かないの? ショウ」

 片づけが終ったところで、アスランが聞いてきた。漫画で仕入れた日本文化なんだろうな。ちょっと小太りの大家さんか、もしくは美貌の未亡人を想定してるとか?

「ああ、そうだな。お隣さんだけには行かないと。大家の娘さんが住んでて、大家代わりで頑張ってくれてるんだよ」

 隣に住んでいるのは、この昭和荘を経営している森家の長女、沙知子さんだ。今は大学3年生だったかな。細い体で頑張り屋さんなんだ。
 まあ、このアパートには面倒な人はいない方だから、そんなに困ることはないとは思うけど。それでも、組費の回収やゴミ捨て場の掃除とか、若い人が嫌がりそうなことも率先してやっている。

「うん、行く。行くよ!」

 まるで珍しい場所への観光に行くかのように、アスランは勢いよく立ち上がった。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

おっさんにミューズはないだろ!~中年塗師は英国青年に純恋を捧ぐ~

天岸 あおい
BL
英国の若き青年×職人気質のおっさん塗師。 「カツミさん、アナタはワタシのミューズです!」 「おっさんにミューズはないだろ……っ!」 愛などいらぬ!が信条の中年塗師が英国青年と出会って仲を深めていくコメディBL。男前おっさん×伝統工芸×田舎ライフ物語。 第10回BL小説大賞エントリー作品。よろしくお願い致します!

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

Promised Happiness

春夏
BL
【完結しました】 没入型ゲームの世界で知り合った理久(ティエラ)と海未(マール)。2人の想いの行方は…。 Rは13章から。※つけます。 このところ短期完結の話でしたが、この話はわりと長めになりました。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

処理中です...