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第9話 ご挨拶
しおりを挟むピンポーン! 明るいインターホンが鳴る。僕の部屋のは実は壊れている。
彼女に言えば、すぐに修理してくれると思うのだけど、別に困ってないので報告していない。
インターホンを押してやってくる奴は普通にいないし、居たとしても面倒な人間に違いない。と思っていたけど、もしかすると大使館の人とか来るかも?
まあいいか。今はスマホという便利なものがある。さっきだって、彼らはアスランに連絡を入れてから、ノックしてやってきたんだ。
「はあい。あ、た、田中さん。どうしましたか?」
いつも思うのだけど、彼女は僕の目を見ようとしない。初めて話した時は、そんなことなかった気がするのだけど……。
――――きっと僕みたいな半分ニートは、視界に入れるのも嫌なんだろうな……。
「あの。しばらくの間だけど、僕の部屋で同居する人がいるので、紹介がてら伺いました」
なんかもう少しいい説明がないものか。伝わったかな。
「ああ、はい。ええっと」
彼女は僕の背で隠れているアスランを見ようと首を伸ばした。あわてて彼と入れ替わる。
「こんにちは! アスランと申します。よろしくお願いしますっ」
と、元気いっぱい挨拶をした。小学生みたいだな。
「は、はい。に、日本語上手ですね。それとも、実は日本人とか?」
そう思っても不思議じゃないほどの日本語だからな。金髪青い目だけど、日本在住歴10何年、という人も確かにいる。
「いえ。独学で勉強しました。南ヨーロッパの国から旅行で来たんです」
「ああ! そうだったんですね。田中さんとはどういう……」
「あ、いや。えーと、友達の友達で。彼がこのアパートを気に入ってさ。しばらく置いてくれって言うから」
説明するのは面倒過ぎる。それに、彼が某国の王子様というのは極秘扱いなんだよ。僕だけに留めてくれって。
「そうなんですか。なにかわからないことがあったら、遠慮なく聞いて下さいね。あ、そんなことは田中さんに聞けばいいか。あはは」
「いやいや、助かります。沙知子さん、いつもありがとうございます」
「はい……」
また目を逸らされてしまった。
「あれ……あれはっ?」
彼女が目を逸らした時、その後ろにどこかで見たことのあるものが……僕の目の端に映った。
それは、彼女の対面キッチンの向こうにあるリビング(そのようにリフォームされている)のそのまた向こうのベランダ。閉じられた窓の外側にあった。
「あ、あいつ! なんだってここに!」
僕はあまりのことに頭に血が上り、そこにいる沙知子さんの姿が目に入らなかった。靴を脱ぐと猪突猛進よろしく、ベランダに突撃した。
「おまえ、なんだってこんなとこにいるんだ! 警察呼ぶぞ!」
「あれ、ショウか。なんだ。挨拶に来たのか」
そこに居たのは、トーゴーだった。僕に追い出されたあいつは、ちゃっかり隣の沙知子さんのベランダにテントを張ってやがった!
「挨拶もなにも……」
「た、田中さん、待って、待ってください。いいんです!」
「沙知子さん、すみません。こいつ、アスランの……え?」
いいんです? なにが? 一体なにがどうなってるんだ!?
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