王子様と一緒。

紫紺

文字の大きさ
11 / 151

第11話 某国の要人

しおりを挟む


 二人が既に挨拶を終えていたと全く知らない僕は、トーゴーが沙知子宅のベランダにテントを張っていたのを見て、すっかり怒り心頭になっていた。
 いつの間に、どうやって沙知子のところに転がり込んだのか。

「お、おまえなんだって、こんなところに!」
「ショウ、言っとくが俺は彼女に許可を取っているぞ」
「きょ、許可だと?」
「そうです。あの、夜だけここに居させてほしいと。部屋には決して入らないからと」
「で、でも……」

 いやいや、あんた、それは危険すぎるでしょう。若い女性のベランダに、こんな若くて……イケメンの奴が。いかにラメリア共和国のお墨付き人物とはいえ(お墨付きかどうか、僕も半信半疑なところだ)。

「夜ならカーテン閉めちゃうし。ほら、寝室は隣の部屋なので」

 と、閉じられたドアをさす。彼女の部屋は2LDKなので、それも可能なのだが。

「し、しかし」

 こうなったら僕のベランダで面倒見るしかない。沙知子さんに迷惑をかけるわけには。

「どうせ俺はここに深夜の数時間しかいないんだ。それ以外は任務がある」

 任務……。つまり、アスランにべったり張り付くってことだ。

「さ、沙知子さんには言ってあるのか? その、アスランが」
「某国の要人だと話している」

 わざと声を大きくしてトーゴーが言った。つまり、第2王子とは言ってないようだが。それで、隠していることになるのか?

「と、とにかく田中さん、落ち着いて話を聞いてください」

 僕の後ろでふるふるしている沙知子さん。ようやく僕は自分が彼女の部屋に上がり込んでいたことに気付いた。



「そ、そうですか。了解しました。ていうか、本当に申し訳ありません。御迷惑を……」

 沙知子さんから、彼女が本当にトーゴーのテントを許可したと知り、とりあえず僕は頭を下げた。にしても、やっぱりモヤモヤする。

「いえいえ。私もなんだか楽しくなっちゃって。某国の要人の方をこのアパートにお迎えするなんて」

 なんだか本当に嬉しそうだ。僕と沙知子さんは、彼女のリビングで向かい合って座っている。彼女の部屋にはソファーとテーブルがあるんだ。
 で、彼女はアイスコーヒーを出してくれた。アスランとトーゴーはめんどくさいので僕の部屋に帰している。

「施錠だけはきっちりお願いしますね。にしても、興味ないとか、失礼な奴だ」
「ああ。それは。彼は、その、ゲイ……てことなんだと」
「え! あ、ああ、そうなんだ」

 な、なんだと。トーゴーの奴、そんなこと一言も。

 ――――え? それって、僕には危険だってこと? いや、まさかそういうことじゃないよな。男なら誰でもいいわけではないだろうし?

「どうかしました?」
「え? ああ。いえいえ。まあ、彼は仕事には忠実なようなので。でも、なにか困りごとがあったら、絶対言ってくださいね」

 これだけは言っておかなければ。王族だがSPだか知らないが、自分の言うことは誰でも黙って聞くと思ってるなら大間違いだ。

「は、はい。ありがとうございます」

 沙知子さんはまた僕から視線を外し、ちょっと肩をすくめて頷いた。




しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

おっさんにミューズはないだろ!~中年塗師は英国青年に純恋を捧ぐ~

天岸 あおい
BL
英国の若き青年×職人気質のおっさん塗師。 「カツミさん、アナタはワタシのミューズです!」 「おっさんにミューズはないだろ……っ!」 愛などいらぬ!が信条の中年塗師が英国青年と出会って仲を深めていくコメディBL。男前おっさん×伝統工芸×田舎ライフ物語。 第10回BL小説大賞エントリー作品。よろしくお願い致します!

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

Promised Happiness

春夏
BL
【完結しました】 没入型ゲームの世界で知り合った理久(ティエラ)と海未(マール)。2人の想いの行方は…。 Rは13章から。※つけます。 このところ短期完結の話でしたが、この話はわりと長めになりました。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

処理中です...