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第13話 湯舟にて
しおりを挟む予想通りお客さんは少なかったが、あまり見かけない金髪青い目、しかも超イケメンのアスランは注目を浴びた。
だが、彼は全く動じることなく、勝手知ったる大浴場のように、体を洗ってから湯船につかった。そこは合格だ。
「アスランはもう、いくつか観光したのか?」
僕もそっと彼の隣に座る。頭にタオルをのっけてるのは、漫画的でちょっと笑えた。
「うん。まずは基本に沿って東京、京都、奈良。奈良では飛鳥方面を重点的にね」
「へえ。あそこまで足を延ばしたんだ。珍しいね」
奈良は観光名所だけど、たいてい大仏見て終わりの人が多い。
「だって! 飛鳥はかの有名な聖徳太子様が暮らしていたんだよ? トリが作った法隆寺も見たかったし」
ほお、聖徳太子はともかく、鞍作の鳥のことまで知ってるとは。漫画というより、歴史も勉強したのかな。
そこまで考えて、ああ、と思う。古い漫画だけど、そのあたりを描いた作品があったな。実は僕も読んだことがあった。
「そう言えば……アスランは知ってるんだよね? あの、トーゴーのこと」
そこから例の話を思い出した僕は、早速アスランに尋ねてみた。タイミングとしては間違いないはずだ。
「え? なんのこと? あ、もしかして」
「あいつ、沙知子さんに言ったんだよ。自分は女性に興味ないって」
アスランは合点がいったとばかりにポンと手を打つ。なにかにつけて漫画調だな、こいつは。
「うん、そうなんだ。だから最初は姉上の護衛に付いてたんだけどね。彼女が結婚したのを機に、私の専属になったんだ」
「へえ。それはつまり、信頼してるってことだよね?」
「それはもちろん。でも、彼が男の私の警護に就くのは確かに反対もあったよ。変な気を起こしたらどうするんだって。
でもそれじゃあ、女性皇族に就くSPを全員女性かゲイにしなければいけなくなる。さすがにそんなことは無理だ。
まあ、私の場合は日本語を教えて欲しいのもあったから、我を通させてもらったんだよ。それに、彼だって男なら誰でもいいわけじゃないよ」
「ああ、そう、だよね?」
少々のぼせてきたのか、アスランは頬を赤らめて僕を見た。
「え? なに? もしかして襲われれるとかでも思った?」
「ええっ、いや、まさか。あはは」
図星を差されて僕はわかりやすく狼狽えてしまった。
「まあ、ショウは可愛い顔してるものね。でも、トーゴーは腕っぷしは凄いけど、そっちには奥手だし紳士だよ。というか、恋愛には向いてないかもねー」
ふふふ、とアスランはどこか歌うように笑った。
「可愛いって、僕は君より8歳も年上だよ。まあ、東洋人は幼く見えるらしいけどさ」
可愛いなんて言われて憤慨していた僕の横に、誰かがすっと入ってきた。
「奥手とか、貴様に言われたくはない」
えっ!
「と、トーゴー。い、いつの間に」
突然声をかけてきたのはSPのトーゴーだった。
「警護のためだ」
とか言ってるが、ちゃっかり汗を流しにきたんだろう。
――――しかし、さすがSPだな。凄いいい体してる……。
どちらかというと、貧弱系な自分の体とは比べようもない。ちらりと見ると、俗に言う見事なシックスパックだ。
「奥手じゃん。間違いなく」
反対側の隣で、アスランが小さく呟いていた。
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