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第17話 夕食会
しおりを挟むトーゴーが振る舞ってくれたのは、パエリア風焼きめしとサラダ、それとレモン味のすっきりした唐揚げ。
多分、地中海料理なんだろうけど、忖度なしで美味しかった。僕らは沙知子さんが持ってきてくれたワインでずっと昔からの友達のようにはしゃいでいた。
「隣の人に迷惑じゃないのか?」
実際そんなに騒いでいたわけではないが、恐らくトーゴーは周りの音が聞こえないのが嫌だったんじゃないかな。
「ああ、こっち側の隣は空き室なんだ。下の階に4部屋、1階に3部屋あって、空いてるのは隣だけだ」
と、僕が言うと仕方なさそうにちょっと口を歪めていた。
「あの、これはお国の料理ってことだから、アスランさんはスペインの方?」
「サチコさん、私のことはアスランで。残念ですが、それはお教えてできないんです」
国名がわかると、そこからアスランが第2王子とバレてしまうことが考えられる。ネットを探れば、素人でも簡単に判明できてしまうのだ。
「沙知子さんのためでもあるんだ。余計なことは知らない方がいい」
今度は少々強面でトーゴーが言う。本日の大使館員の様子からも、そんな危険があるとは思えないけど、まあ、知られたくないよね。
「お忍びだからさ。僕もちゃんとは知らないんだよ」
「え? そ、そうなんですか」
沙知子さんはちょっと狼狽えた様子で視線をアスランに移した。
「あまり騒がれたくないのです。御迷惑をおかけしますが……」
「あ、ああ。はい。すみません。ミーハーなもので。SPが付いてる偉い外国の方なんて浮ついちゃって、ごめんなさい!」
ぺこりと頭を下げる沙知子さん。アスランは彼女の手をスッと取り。
「謝らないで下さい。私は日本が大好きで、どうしても行きたいと我が儘を言ってきたのです。それに、偉いのは私の父であって、私はその息子というだけなんです。トーゴーは私の友人兼日本語教師でもあるので、気にしないでください」
友人。そうアスランが言った時、トーゴーのいつもは動きの少ない表情筋がピクリと動いた気がした。それがなにを示すのかはわからなかったが。
「ああ、素敵です。アスランさんは本当に日本語が上手ですものね」
彼女の詮索は、一応そこで終了したようだ。アスランが某国の第2王子と知ったら、沙知子さんはどう思うだろう。まさかとは思うが、お妃候補に名乗り上げるとか?
恐らくだけど、そんな可能性もあって、素性を明かさないのだろうけれど。
――――なんだか、モヤモヤする。アスランは沙知子さんのことどう思っただろう。気に入って、身分を明かしプロポーズしたりとか?
僕の思考はどんどんおかしなところに飛んでいく。
「どうした? もっと食べろよ。気に入らなかったのか?」
「あ、い、いや。そんなわけないよ。めっちゃ美味いよ!」
そんな僕をあっという間に現実に引き戻してくれたのはトーゴーだ。その鋭い眼差しに、僕の思惑が読まれたのではないかと本気で焦った。
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