王子様と一緒。

紫紺

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第18話 王子様と一緒?

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 明日が早い僕のために、沙知子さんは9時には帰っていった。あれ、僕のシフトなんで知ってるんだろう。
 まあいいや。助かった。それまではアスランの漫画愛や日本旅行の色々を興味津々で聞いていたのだけれど。

「じゃあ、俺も上に行くから」
「上?」

 トーゴーはきちんと後片付けをし、謎の言葉を残して退室。上ってことは、やっぱり屋上なのか。

「いいのか? あれで」

 残った僕はアスランに尋ねた。

「彼のことは気にしなくていいよ。いちいち気にしてたら胃に穴が開くよ」
「お、おお。わかった」

 やっぱり護衛というのは大変なんだな。しかし、アスランも全くプライベー
トがないってことになる。それも王族の宿命なのか。
 ボディーガードと友人関係になるというのも、彼なりに最低限の自己防衛なのかもしれない。友達と思えば、少しくらいプライベートに踏み込まれても気にならなくなる。

 ――――でも、胃が痛くなるか。アスランはトーゴーのことを普通に友人と思ってるんだ。気にかけてるんだよな。

「ああ、今日はもう疲れたから先に休ませてもらうよ。ショウも明日早いからその方がいいだろ?」

 大きなあくびをして、アスランはふらふらと立ち上がる。パジャマに着替えるのか服を脱ぎ始めた。
 銭湯でも思ったけど、トーゴーほどとではないとしても、アスランも引き締まったいい体をしてるんだよな。暴漢に対応するため鍛えてるんだろうか。

「あ、そうだ。今、布団を……」
「おやすみー」
「え?」

 僕が押し入れにしまってある布団を取り出そうと立ち上がると、アスランはボクサーパンツ一枚で、僕のベッドに潜り込んだ。

「お、おい! アスランはこっちの……」

 布団で寝るんだよ。と言う前に、なんとアスランはさっさと寝息を立てている。疲れているのは理解できるけど、なんでベッドで……。

 ――――まあいいか……。今晩……だけだ。

 僕はすごすごと自分のために布団を敷く。スマホのアラームをセットしようとしたら、まだ10時過ぎたところだった。いつもなら、明朝バイトでも日付が変わる頃まではパソコンに向かっている。

 ――――でも、今日はさすがにやる気が出ない。

 思い出せば、本日何十回めの予選落ちを目にしてきたんだ。あの新人賞は確かにハードルが高い老舗だけど、比較的緩そうなのも全然ダメなんだ。

 ――――さすがにもう諦めたほうがいいかもな。今年で僕も29になる。少なくとも定職に就くべきかもしれない。

『諦めたらそこで試合終了ですよ』

 なんて、昨年はこのセリフのアニメの劇場版が話題になっていた。それで僕も、もう一度頑張ろうとしたのだけれど。その燃料も尽きてきた。

 ――――王子様と暮らすことになった現状。この美味しい現実をネタにと思わなくもないけれど……。

 残念なことに僕が書くジャンルはミステリだ。どうにもミステリ色のない、ほのぼの小説なんて書けそうにない。

 ――――タイトルは『王子様と一緒』とか? ほら、どう考えても僕の作風じゃないよ。

 まだ寝るには早いと思ったのに、僕も相当疲れていたのか、あっという間に寝落ちしてしまった。



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