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第22話 大貫さん(アスラン視点)
しおりを挟むショウこと田中明夫がコンビニで忙しく働いていた頃、彼のベッドで惰眠を貪っていたアスランもようやく目を覚ました。
「ショウ? あ、もう仕事行ったんだ」
畳敷きの部屋、ベッドの横にはきっちり布団が畳まれていた。それ以外、部屋の中は昨夜のままだ。ただ、タイマーをかけていたのか、扇風機は止まっていた。
『光熱費は折半で』
との約束だったが、自分がたくさん使うようならその分は多めの払えばいい。アスランは遠慮なくエアコンをつけた(エアコンは昭和荘にも常設されていた)。
「おい、なにしてる? 今日の予定はどうなってんだ」
昨日のパエリアが少し残っていた。それを朝食代わりに食べているところに、トーゴーがやってきた。窓から。
「おはよう、トーゴー。今日は行きたい本屋さんがあるんだ。蔵書はもちろん、すごく大きくて綺麗なんだよ」
そう言って、アスランはスマホをトーゴーに見せる。そこにはインスタで多くのイイネがされている写真があった。国立図書館のようなでかい書店。カフェも併設されているらしい。
「へえ、いいじゃないか。明るいし」
――――人が隠れる棚がこんなにあるのか……。
トーゴーは内心穏やかではなかったが、アスランが行きたい場所なら仕方ない。勧められるまま珈琲を飲むと、そのまま一緒にアパートを出ることになった。
「あ、おはようございます!」
階段を下りると、ちょうど部屋から出てくるところの住人に出会った。もう10時を過ぎているので、おはようは正しいかどうかは不明だが、その住人は少し怪訝な表情で返した。
「あ、はい。おはようございます」
二十歳くらいの青年だ。Tシャツにデニムといったラフな格好。寝不足なのか、黒ぶち眼鏡の奥、充血した両目を瞬かせている。身長は田中よりも低いが痩せていた。
「あの、私、二階の田中さんのところで居候しているアスランと言います。こっちは友人のトーゴー。しばらく居るので、よろしくお願いします」
流暢な日本語で頭を下げる金髪青い目のイケメンに、青年はかなり驚いたようだ。慌てて寝ぐせのついた髪を右手で撫でつけた。
「あ、ああ。はい、田中さんのところですか。大貫です。よろしく」
青年は愛想はないが、律儀に頭を下げてくれた。アスランはなにか話を続けようと口を開けたが、大貫はそれをガン無視して踵を返す。
「あの……」
それでも声を掛けようと開けた唇に、トーゴーの手が塞いだ。
「急いでるんだろう。少しは他人に気を使え」
「え……へも……」
それでもなにか反論しようとしたが、アスランは大人しく黙ることにした。
背中に触れるトーゴーの気配。今朝の珈琲の匂いが残る彼の手のひら。まだもう少し、塞がれていたいと感じていた。
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