王子様と一緒。

紫紺

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第23話 いいじゃん

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 午後2時。僕のシフトが終り、とりあえず帰宅した。コンビニの冷房に冷え冷えにされた体も、3分も歩けばあっという間にゆでだこ状態になる。かなり汗を掻いてアパートにたどり着いた。
 さっきスマホでアスランに連絡したら、今日は代官山にいるらしい。いい話があると勿体ぶってやったら、めっちゃ興味津々で今から帰ると言ってきた。まあ、そんな急がなくてもいいんだけど。

 ――――どうしよう。エアコン付けようかな。真昼間くらいはいいか。

 僕は玄関のドアを開ける。いつものようにもあっとした空気を頭も体も準備していた。なのだが!

「え? 涼しいな。どういうこと?」

 半間の玄関。靴を脱いでダイニングに向かい、僕はそこで愕然とした。

「エアコン点けっぱなしだと!」

 リモコンを探すと僕の作業机の上にポツンと置かれている。慌てて手を伸ばし、スイッチを切った。

「アスランのやろう! 朝点けるのはいいとして、点けっぱなしとは許さん!」

 恐らく自分の家、というか屋敷、それとも宮廷? ではエアコンを消すどころか点ける習慣もないんだろう。高級ホテルと一緒だ。自分でコントロールすることはほとんどない。

 ――――僕が説明しなかったのも悪いのか……。

 腹は立ったけれど、仕方ないのもある。今のエアコンは、節電機能もちゃんとしてるから、それほどの消費電量でもないだろう。自分もうっかり消し忘れたことはある。

 僕はいら立ちを抑え、けどちゃんと話そうと思いながら、噴き出ていた汗を拭いた。

 ――――代官山からなら、まだしばらくは帰ってこないか。

 早朝から仕事で僕の眠気は頂点に達していた。まだ部屋に残る冷気も心地よい。
 育ちが良いからか、ベッドは綺麗にメイキングされている。その整えられたシーツに誘われるよう横たわると、僕は秒で眠りに落ちた。



「ただいまー」

 じわじわきていた暑さと人の気配で目を覚ますと、たった今玄関を開けたところのアスランがいた。代官山までは電車で行ったのか、額に汗が滲んでる。

「暑かったー。トーゴー、エアコンつけて」

 購入してきた雑誌類をダイニングテーブルに置くと、アスランは冷蔵庫の中になにかしらを入れている。

「寝てたのか。起こして悪かったな」
「あ、いや。大丈夫。結構寝た」

 スマホを見ると、ちょうど1時間ぐらい寝ていたことになる。トーゴーがリモコンに手を伸ばす。暑いところを帰って来たのだから、僕はそれを黙認した。だが、今回のことを黙っているつもりはない。

「アスラン、ちょっと来て」
「あ、うん。いい話ってなに? バイトのことだよね?」

 満面の笑みを浮かべ、アスランは僕の前に来て座った。僕はベッドの上にいるので必然的に見下ろすことになる。

「その前に。今朝、エアコンつけたでしょ」
「え? あ……駄目だった?」
「いや、それは構わない。暑かったと思うから。僕は2時頃帰ってきたんだけど、つけっぱなしだったよ」
「あっ!」

 アスランはしまったという表情をした。

「ごめん! つい習慣で。自分でエアコンの操作することってあまりなくてね。家でもホテルでもそうだから」

 そうだろうとも。電気代がかかるとか、全く関係のない話なんだろう。

「わかってる。でも、これからは気を付けてね。僕も節約を心掛けてい……」
「時間にしたら5時間くらいだよね。その分は払うからいいじゃん。それより、話を聞かせて……」
「僕がまだ話してるじゃないかっ。それにいいじゃんってなんだよ!」

 いきなりの大声に、アスランは全身をびくつかせて黙った。僕もなんでこんなに怒った言い方をしたのか。
 でも、なんだか物凄くムカついたんだ。彼が僕らとは天と地ほど生活が違う、王子様だってわかっていたのに。


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