王子様と一緒。

紫紺

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第24話 庶民の暮らし

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 つけっぱなしてあったエアコン。電気代にしても大した額ではない。それに不注意は誰にでもある。ましてや彼は、エアコンのリモコンとは全く縁のない王子様なんだ。

 ――――でも、イラついたのはそこじゃない。

「不注意を責めるつもりはないよ。けど、アスランは庶民の生活をしたいんじゃないの? 節約は庶民生活の大事なとこだ。なんでもお金で解決できるって思ってんだろうけど、僕は面白くないな」

 上から見下ろしているからって、別に立場が上になったわけじゃない。なのに、なんだか偉そうな言い方になってしまった。
 そう言えば、昨夜アスランは当然のように僕のベッドで眠った。彼の方こそ、僕を使用人みたいに思ってんじゃないのか、とつい考えてしまう。

「あ、ご、ごめん。そんなつもりじゃなくて……」
「僕は財布を落とした君なら、同居してもいいって言ったんだ。ただ古いアパートに住みたいだけなら、隣の空き室を借りればいい。そこなら、新しい家具や電気製品を買えるし、エアコンだって好きに使えるじゃないか」

 そうだ。多分、その方がお互いのためにいいに決まってる。こんな狭いアパートに二人で住むより、なにか困ったことがあるなら教えてやらなくもない。

「ショウは……私がいるのは嫌? そりゃ、迷惑……だよね」

 明らかにシュンと肩を落とすアスラン。チキンな僕はハッとしてしまった。言い過ぎた。

「い、いや。そうじゃないんだ。僕は、その」
「だったら、お願いだよ。もう少しここに置いて。一人でアパートで暮らすなら、ホテルと変わらないんだ。私は愚か者だから、すぐに自分の元居た暮らしに作り変えてしまう。
 私はずっとワクワクしてるんだ。ここでの暮らしは私には予想もつかなくて、新しいことがたくさんあるし、起こってる。それにたった今、ショウが怒ってくれたことで確信したんだ。
 勢いで言ったような『庶民の暮らしを体験したい』だけど。ショウとならおざなりのものでなく、現実のものになる。それはきっと私にとってかけがえのない財産となると。
 上手くできないかもしれないけど、節約も頑張る! 間違っていることはどんどん言ってもらって大丈夫。私、一生懸命学ぶから! お願いします!」

 ええ……。なんか、王子様とあろうものが、畳に頭を付けてんだけど。これも漫画で学習済みの土下座?

「あ、アスラン、とりあえず頭上げて。僕もちょっと言い過ぎたと反省してる」

『庶民の暮らしを体験したい』てのは、勢いだったんだ。まあ、そうだよね。前々から計画していたことではないだろう。
 けど、こんな汚いアパートに、彼は好奇心だけでやってきた。エアコンつけっぱなしして怒られるとか思ってもみなかったろうな。それが嫌だと思ったなら、じゃあ、ホテルに戻ります。と、踵を返すところだろう。

 第二王子がラメリアでどんな役割を担うのかわからないけれど、この日本での生活が、なにかしらの役に立つなら、それも悪くないかもね。

「居候、継続させてもらえますか?」

 恐る恐る頭を上げ、僕の顔を覗く。キラキラの金髪とうるうるした青い目が美し過ぎて眩しい! 僕はベッドから下りると、同じ目線になるよう畳の上に座った。

「もちろん。でも、居候じゃないよ。ルームメイトだ。僕がバイトしているコンビニで至急の求人があるんだ。どう? やってみない?」

 ふわっ! とアスランの体が浮いたように感じた。飛び上がらんばかりに背を伸ばし、何度も首を振った。

「やる! やらせて! コンビニのバイトだよね。やってみたかったんだ。ありがとう、ショウ!」
「うわっ」

 王子様が僕に抱き着いてきた。体ごとぶつかってきたので、もう少しでひっくり返りそうになる。

 ――――なんか、いい匂いする。

 汗かいてたはずなのに、アスランの金髪からはジャスミンの花のような香りがした。



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