王子様と一緒。

紫紺

文字の大きさ
31 / 151

第30話 コンプレックス

しおりを挟む


 アスランは予想以上にバイトに適応した。日本語も問題なかったし、明るくて愛想も良い。しかも金髪青い目のイケメンだ。
 常連、飛び込みどちらのお客様にも評判がいい。言うまでもないが、いつもはとっても厳しいパートのおばさま方にも好評。

 ――――トイレ掃除も頑張ってたもんな。やっぱり育ちがいいと、素直なんだよな。一生懸命さが伝わって、好意を持たれるのは当たり前だ。

 アスランは外国の王子様で半分ニートみたいな僕とは雲泥の差がある。それだけでなく容姿まで月とすっぽん。まあ、あまりに違い過ぎるから、嫉妬心を持つ気にもならないけどね。

 ――――きっと、由緒正しいお家柄の、美しい女性と結婚するんだろうなあ。

「アスランは婚約者とかいるの? どこかの国の王女様とか」

 だから、こんなふうに尋ねたのはやっかみ半分、ただの好奇心だった。もちろんトーゴーのことも頭に過ったから、アスランがナチュラルかどうか知りたかったのも嘘じゃない。

「ああ……それは」

 二人で向かい合っての夕食。本日はソーメンを茹でた。アスランは大葉や冥加よりもネギがいいみたい。器用に箸を使って啜っていた。

「ひと昔前までは、皇族同士の結婚が当たり前だったようだけど、それだと相手が限られて結局いなくなるからさ。兄はラメリアの外交員と結婚したんだ」
「つまり、民間からってわけか。お兄さんは皇位継承一位なんだよね。末は国王だから王妃様かあ」

 なんだかおとぎ話のようだ。我が国の天皇陛下も二代続けて民間の方が妃になられている。そういえば、現天皇皇后は外務省の職員だったな。

「そういうこと。だから、お互いが望めば……例えば沙知子さんとだって結婚できる」
「ええっ!? なんだよ、それ!」

 ま、まさか本気で言ってないよな?

「んん? なに、例えばの話だよ? それに沙知子さんにだって選ぶ権利あるし……」
「そんなの! アスランに望まれて嫌って言うワケないじゃないか!」

 思わず僕は右手を握りしめ叫んでしまった。自分の声の大きさに自分で驚く。

「それは……沙知子さんに失礼だよ。私だって、王子ってだけが自分の価値じゃないつもりだけど」

 アスランはわかりやすくムッとしている。確かに、王子が求婚すれば誰でもイエスと言うのは当たり前ってわけじゃない。性格の悪い王子もいるだろうし、皇族なんて窮屈な生活が嫌と言う人もいるはずだ。

 ――――でも、アスランはいい奴だし。なんにしろイケメン……。

 そこまで考えて、自分は相当アスランにコンプレックスを持っていることに気付いた。アスランだけでなく、トーゴーだってカッコいいし……。

「ごめん。つい……アスランは僕から見ると、本当に王子様だから」
「え? いやいや。それより、もしかしてショウは沙知子さんのこと好きなの?」
「ち、違うよ! な、なに言ってんの! それこそ……彼女に失礼だ。僕みたいな冴えないニート……」

 思わぬ反撃に、僕はそこまで言って黙り込む。目の前のソーメンをまた啜り始めた。

「ニートなんかじゃないよ。ショウは。コンビニもそうだけど、君が深夜までパソコンに向かっているの、知ってるよ。
 それに全然冴えなくない。容姿もだけど、人間として、私は尊敬してるよ。私のような面倒なのを気にかけて居候させてくれて。色々教えてくれて……」
「も、もういいよ。ありがと」

 お世辞はもういい。世話になってるからってそこまで言わなくても。僕は俯いたままそう返す。
 アスランは小さくため息を吐くと、またソーメンに箸を向けた。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華
BL
 高校一年の夏、龍冴(りょうが)は二つ上の先輩である椰一(やいち)と付き合った。  けれど、告白してくれたにしては制限があまりに多過ぎると思っていた。  ぼんやりとした不信感を抱いていたある日、見知らぬ相手と椰一がキスをしている場面を目撃してしまう。  けれど友人らと話しているうちに、心のどこかで『椰一はずっと前から裏切っていた』と理解していた。  それでも悲しさで熱い雫が溢れてきて、ひと気のない物陰に座り込んで泣いていると、ふと目の前に影が差す。 「大丈夫か?」  涙に濡れた瞳で見上げると、月曜日の朝──その数日前にも件の二人を見掛け、書籍を落としたのだがわざわざ教室まで届けてくれたのだ──にも会った、一学年上の大和(やまと)という男だった。

おっさんにミューズはないだろ!~中年塗師は英国青年に純恋を捧ぐ~

天岸 あおい
BL
英国の若き青年×職人気質のおっさん塗師。 「カツミさん、アナタはワタシのミューズです!」 「おっさんにミューズはないだろ……っ!」 愛などいらぬ!が信条の中年塗師が英国青年と出会って仲を深めていくコメディBL。男前おっさん×伝統工芸×田舎ライフ物語。 第10回BL小説大賞エントリー作品。よろしくお願い致します!

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

Promised Happiness

春夏
BL
【完結しました】 没入型ゲームの世界で知り合った理久(ティエラ)と海未(マール)。2人の想いの行方は…。 Rは13章から。※つけます。 このところ短期完結の話でしたが、この話はわりと長めになりました。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

処理中です...