王子様と一緒。

紫紺

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第42話 アスランの憂鬱

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 バイトが終わり帰宅すると、既にアスランは部屋にいた。彼が買ってきてくれたお土産を食卓に広げ、ビールとともに夕食となった。

「湘南はどうだった?」

 本日、アスランは有名な踏切を見に行くと言っていた。その場所も由来も僕も知っていたけれど、自分はもちろん行ったことがない。

「うん、良かったんだけどね。人がたくさんいて……あれじゃ、地元に人たちに迷惑だよ……危ないし。だから、写真も撮らずに帰ってきた」

 昨今、オーバーツーリズムが問題になっているからな。そんなことだろうと思っていたけれど、さすが王子様はちゃんとわかってる。安心したよ。

「それよりさ、今日、ミレンのことでちょっとあってね」

 と、今朝、1階の成田さんが沙知子さんに苦情を言ったことを聞いた。

「そうかあ。それは沙知子さん、大変だったね」
「うん。でも、私も一緒にミレンのところに行って話をしたんだ。ちゃんとわかってもらえたと思うよ」

 こういうのは、慣れない日本語で言えば誤解を生むこともある。母国語であれば、ミレンもちゃんと聞き入れることができるだろう。常識のある人ならばだけど。
 僕も今まで挨拶くらいしかしていない。あんまり部屋にいないみたいなんだよね。研究とかが忙しいのかな。

「ねえ、ショウ。実はミレンのことで気になってることがあるんだ」

 アスランが買ってきてくれたのはシュウマイだ。一口頬張る。美味しい。

「なに? 他にもなにかあるの?」
「うーーん。ミレンというより、気になってるのはトーゴーなんだよね」
「え……トーゴー!?」

 アスランがトーゴーのことで気になってるとは? そう言えば、僕はずっとそのことをモヤモヤしたまま解決してこなかった。解決というか、真相というか……。勝手に想像してるだけとも言えるが。

「うん。トーゴー、ミレンの話をするとなんか嫌そうなんだよね。すぐ話を変えちゃうし、興味ないって感じで……」
「はあ……そうなんだ」

 そんなこと、気付きもしなかったな。

「前なんか、私がミレンを見つけて話をしようとしたら、あっという間にいなくなっちゃって。顔を合わすのも嫌そうなんだよ」
「へえ……それはなんか変だな」

 なんだろ。まさか、アスランがミレンと仲良くするのが嫌だとか? それなら姿を消すより邪魔するよな。

 ――――やっぱり、トーゴーとアスランが互いに好意を持ってるなんて、僕の勝手な想像でしかないのかも。ミレンについては嫌いなタイプとか……?

 それか逆に気になってるとか!? だから反ってわけわからん行動に出てるとか。いやいや、そんな小学生みたいなことしないよな?

「まさかとは思うんだけど……ミレンのことが気になってるってわけじゃないよね? ほら、ミレンって童顔っていうか、可愛いタイプだから」

 ――――えっ! な、なんかおかしな方向に話が……。

「し、心配なの? アスラン」
「そ、そうじゃないよ! いや、トーゴーの恋愛にあれこれ言うつもりはないけど。ほら、護衛が上の空じゃ困るじゃん!」

 そんなことが、トーゴーに限ってあるわけはない。アスランは真っ赤になって反論したけれど、その様子だけ見ると、僕の想像も間違ってなかったのかと思ってしまったよ。



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