王子様と一緒。

紫紺

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第44話 嫉妬?

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 8月に入っても毎日暑い。けど、今年の僕は意外にも涼しい。光熱費や家賃が半分になるので、気楽にエアコンが使えるようになったからだ。王子様を熱中症になどさせられないし。

 ――――ルームシェアも悪くない選択なんだな。まあ、アスランは王子様にしては素直だし、一緒に暮らしててストレスにならないからな。

 トーゴーも圧はあるのに、空気になるのがうまい。さすが王宮の護衛だよ。

「おはようございます。先日はお世話になりました」
「え? あ、ああ。ミレンさん」
「あれ? ミレン、眼鏡どうしたの?」

 バイトに行こうとアスランと一緒に部屋を出たら、ちょうど隣室のミレンも廊下に出てきた。いつものTシャツに薄手のジャケット。
 だが、アスランが指摘したように銀縁眼鏡がなかった。僕は違和感そのまま、一瞬知らない人のように感じてしまった。

「暑いので……やめました」

 暑いので? どういう理由。コンタクトにしたんだろうか。でも……。

「いいんじゃないですか。印象が柔らかくなったというか」

 普通にイケメンだよ。可愛いとも言える。眼鏡かけてる時からそうだろうとは思ってたけど、くるんまつ毛が凄い主張してくるっ。

「そうでしょうか……僕の職業だと、あまり若く見られるのはマイナスなんですけどね」

 なるほど。大学の先生だから、学生たちに甘く見られるってことかな。

「マイナスじゃないよ……絶対」

 珍しくアスランが小声で言う。なんだか自信なさげというか、ショックを受けたみたいに思えた。

 ――――もしかしてアスラン、ミレンが思ってた以上に可愛いのに嫉妬してる? いやいや、君も十分に美しいよ? トーゴーの趣味は知らんけど。

 大体ミレンはトーゴーと接点ほとんどないだろう。今だって神出鬼没で現れるあいつの気配すらない(気配を消すのは得意なので、実際はわからないんだけど)。

「それで、成田さんとは和解できました?」

 成田さんに夜中うるさ過ぎと苦情を受けたミレン。その後のことを僕は聞いていなかった。

「はい。その日の夜、謝罪に伺いました」
「直接行ったんだ。凄い! 偉いなあ、ミレンさんは」
「そう? ですか? 日本では当たり前のことだと思ってましたが」

 おおっと。そうか。そんなふうに思ってくれてたのに、僕が意外そうにしては夢を壊してしまったかな。

「揉め事になることも多いから。あ、成田さんなら大丈夫だけどね」

 でもそれが現実だ。隣人トラブルって根が深いし、毎日のことだから疎かには出来ないよ。
 ただ、昭和荘は家賃も安いし代理だけど沙知子さんが住んでてくれる。住人も古くからいる人がほとんどだから心配はしていない。成田さんも深く知らないけど、今までなにもなかった。

「そうでしたか。はい、成田さんは優しい人でした。やっぱりこのアパートは良いですね。ね? アスラン」
「え? あ、うん。私も満足してる。ショウには迷惑かけてるけど」

 やっぱり反応が薄いアスラン。僕は彼の肩を軽く叩く。

「迷惑じゃないよ。さ、行こう。遅れるとマズい」

 ――――こんなことで凹むなよ。

 この凹みが僕の想像通りだとしたら、なんとかトーゴーとアスランの仲を取り持ってやれないかと思う。もちろん、大きなお世話だろうけれど。

 しかしこの後、アスランがさらに凹むことになると、その時の僕は知らなかった。



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