王子様と一緒。

紫紺

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第47話 ミレンの部屋(トーゴー、ミレン視点)

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 トーゴーはアスランのバイト中、コンビニの正面入り口と裏口の両方が見える場所に陣取っていた。
 すぐ近くに建つマンションの屋上が彼の要求を満たしていて、双眼鏡で来客たちや周りをうろつく人間を見張っている。猛暑でも嵐でもほとんどその位置は変わらない。

 この二日、トーゴーは不穏な気配を感じ取っていた。いつも通りに見える街角、人通り、車の往来。だが、そこにどこか違和感が。
 場違いなピースが混ざっているジグソーパズルのように、トーゴーの危険センサーがビシビシと反応する。だが、そのピースを見つけるにはまだ至っていなかった。

 ――――ミレンと関係があるんだろうか。そういう感じじゃないんだが。あいつはなにか気付いているか?

 今朝、見かけた時にはそういう雰囲気はなかった。眼鏡を止めたことを揶揄ったら、素で照れるのでなんだか調子が狂った。
 一体こいつは何しに日本に来たのかと思うくらい、ここでの生活をエンジョイしてるように思える。

 ――――まさかと思うが、アスランを狙う連中が迫っているのかもしれん。

 トーゴーは唇を真一文字に結び、グッと腹に力を入れる。なにがあってもアスランを守らなければ、今まで何度もそう誓ってきた。今もまた、強く誓うのだった。



 同じころ、ミレンは自室にいた。階下の住人、成田に言われてから夜中に運動が出来なくなった。だが、鍛錬は怠れない。
 ジムに行くには目立ちすぎるので控えたい。ということで、彼女が出勤している間にやるしかない。アスランもバイト中なら、どうせトーゴーが張り付いてて自分の出番はない。

 ミレンは大家代理の沙知子やアスラン、田中達に決して部屋内を見せることはなかった。見せるつもりもない。
 それは、この部屋に種々置いてあるトレーニング器具のためではない。こんなものは、少々度が過ぎてはいるかもだが、筋トレ好きな男性ならアリだろう。

 ――――ふう。今日もカッコいいなあ。

 一汗掻いたミレンは洗面所で汗を拭くと、部屋の真ん中でプロティンドリンクを飲む。その視線の向こうには。

 ――――あいつの写真、もっと欲しいな……まあ、隠し撮りなんて絶対できないけど。

 田中との部屋を遮る壁にでかでかと貼られているのは、トーゴーとミレンのツーショットだ。まだ訓練生だった時のショットは、黒のノースリーブシャツを着た二人がカメラに向かっておチャラけたポーズを取っている。
 満面笑みのミレンとは違い、トーゴーははにかんだ感じだが、逞しい腕や胸板が惜しげもなく披露されている。普通サイズの写真だったが、ミレンはそれをめいいっぱい引き延ばし、それを壁に貼っているのだ。

 そのほかにも、頭だけでも腕だけでも、トーゴーが写ったものとなれば何でもかんでもかき集め、壁一面に貼りまくっている。

 ――――これを誰かに見られることは絶対許されない。

 軍の宿舎では叶わなかったことだ。日本に行くときは不安もあったが、今はかなりの部分で満足して楽しく思うほど。いや、任務を忘れたわけではないが。

 ――――なによりトーゴーのそばにいられるんだ。少々危険なことがあってもおつりが出る。

 今朝はトーゴーから、眼鏡をやめたことを揶揄われた。『俺が言ったからか?』なんて無垢な顔して。とミレンは思う。

 ――――その通りだよ。童顔は嫌だったけど、おまえが構わないって言うからさ……。

 ふうっと甘いため息を吐いた。その時……ミレンの表情が一変する。童顔でも眉を顰め険しい目つき、そして足音も立てずに玄関ドアに耳をつけた。

 ――――廊下に誰かいる。トーゴーか? いや、違う。そうじゃない。

 トーゴーが感じ取っていた場違いなピース。それは確実に迫る危機だった。
 


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