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第48話 それより、な話
しおりを挟むその日、僕とアスランは銭湯松葉の湯で汗を流してから帰宅した。まだ暑い日は続くが、陽が沈むのは早くなっている。帰宅するころにはもう暗くなっていた。
「トーゴーがムキムキなのは知ってたけど、ミレンもいい体してたね。夜中に運動してたのは本当だったんだ」
本日の松葉の湯には、どういうわけか昭和荘の面々が集っていた。トーゴーはいつも通り、僕らとは話もせずにさっさとシャンプーして出て行ったけど。
ミレンとは湯舟の中で少し話をした。アスランも大人の対応? をしてたよ。
「そうだね……私も少し驚いた。なんか、可愛い顔とのギャップというか」
「だよね。でも、成田さんにバラの花束持って行くなんて。日本人じゃ絶対ない発想だよ」
「あはは。それは人種関係ないよ。私だって考えつかない。お菓子とかは持っていくかもだけど」
ご近所付き合いに波風立てないようにしよう。そう思うのは国籍関係ないのかな。もしそうなら、戦争なんて起きない。なんてね。そう簡単に行くわけないか。
「でも、あんなイケメンが花束持ってきたんだ。成田さん、ドキドキだったんだじゃないかな。一目惚れしちゃったりね」
成田さんのいつもの几帳面そうな表情を思い出すと、想像しにくいけれど。
「そう? そういうこと、あるかな?」
え、おいおい。アスランが食いついてきちゃった。そうか。ミレンが成田さんと仲良くなったら、アスラン的には安心なのかな。複雑な心境だな。
「あ、こんばんは。お疲れ様です」
昭和荘に着くと、ちょうど階段のところで沙知子さんに会った。
「こんばんは。なにかありましたか?」
まさかまた、成田さんになにか言われたとか。花束なんてもらった女性側からしたら、実は怖いとか……かもしれない!
「あ、いえ。廊下の電気が切れていたので」
「ああっ。それなら言ってくれれば僕がやりますよ」
若い女の子が、脚立に乗って電球を交換するとか……人件費がかかるから、沙知子さんは大抵のことを自分でやるんだよね。本当にいい子だよ。
「あ、ありがとうございます! でも、大丈夫です。管理人の仕事ですから」
沙知子さんは笑顔を見せてから、下を向いた。一瞬、花が咲いたような錯覚を覚える。一瞬だったけど。
「あ、そうだ。それより、アスランさん」
「はい?」
突然、呼びかけられたアスランは階段に掛けていた足を止める。いや、それよりって……どういうこと? なんでアスランに? 僕も嫌な予感とともにドキリとしてしまう。
「あの、トーゴーさんとミレンさんって親しいんですか?」
え……。
「今日、お二人が親しげにお話されているのを見かけて。いつの間にって思ったんです」
――――なんだとー!! それ、もしかしてやばくない!?
僕は恐る恐るアスランの顔に視線を向ける。予想通り、というかそれ以上、彼は衝撃を受けた表情で固まっていた。
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