王子様と一緒。

紫紺

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第49話 突然の告白

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 昭和荘の二階へと続く階段の上り口。僕とアスラン、沙知子さんの三人が通行止めするようにして立ち止まっている。
 別に三人とも二階の住人なんだから、昇っていけばいいのに、アスランが通せんぼの形になっていた。

「さ、さあ……私も知りませんけど」
「そうなんですか? 今朝、洗濯物を干してたら二人が話しているのを見たんです。トーゴーさんが笑顔になってるのって珍しいじゃないですか」

 それはまあ、珍しいよ。大体笑顔の前に、トーゴーとミレンにどんな接点があって話に至るんだ? 
 あいつがこのアパートの住人に、個人的に話しかけるとか想像できんし、話しかけられるのはもっと考えられない。

「笑顔……だったんだ」

 アスランが顔面蒼白なのを、沙知子さんは気付いていない。階段の電灯暗いから仕方ないか。

「ええ。冗談言い合うみたいな雰囲気で。トーゴーさんも日本人だけど英語は堪能だし、海外暮らしが長いから頼りにされてるのかもしれませんね」
「ああ。そうですね……彼もああ見えて、面倒見がいいから」

 嘘つけ。アスランに関わりのない面倒は絶対拒否だよ、あいつは。じゃあ、なんだ。アスラン絡みってことか? 

「そうなんですね。英語が喋れるの、アスランさんとトーゴーさんしかいないから。私も勉強した方がいいのかな……」
「沙知子さんが気にされることではないですよ。大家さんのお仕事、よくやって頂けてます。ミレンも困ってないと思いますよ。トーゴーと話していたのは、英語が恋しかっただけじゃないですか。成田さんのこともあったし」

 ここはフォローするところだろう。アスランは気もそぞろになってるし、僕はすかさず点数稼ぎに出た。

「あ、ありがとうございます! 田中さんにそう言ってもらえたらめっちゃ元気出ます!」

 珍しく僕の顔を見て、沙知子さんがそう言った。その予期せぬ迫力に僕は思わず後退る。

「私、先に部屋に行ってるね」

 そんな僕の動揺には全く気付くことなく、アスランが突然階段を駆け上る。

「あ……あれ、アスランさん、どうかしたのかしら?」

 ようやくアスランの様子がおかしいことに気付いた沙知子さん。

「トイレにでも行きたかったんじゃないかな。僕も行きます。おやすみなさい」

 本音ではもう少し沙知子さんと話したかったけれど、二人になれば、ネタはすぐ尽きてしまうだろう。それに、さすがにアスランが心配になった。


「どうした? アスラン……」

 部屋のドアを開けると、アスランは暗いままの和室で座り込んでいた。背中が丸い。少し震えているようにも思えた。

「ショウ……私は、私はラメリアに帰りたくない。王子なんてまっぴらなんだ!」
「え? な、なに?」

 トーゴーとミレンのことから、どうしてそっちになった? 僕はそっと彼の隣に座った。やはり、アスランは泣いている。

「私は……トーゴーのことが好きなんだ」

 答え合わせをするまでもない。僕は小さく息を吐き、彼の背中をさすった。


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