王子様と一緒。

紫紺

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第81話 ミレンの浴衣(アスラン視点)

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 鯉の池公園へと向かう道は、車が通れないほどの勢いで人が増えている。祭りは公園の向こう側にある駅前でも夜店などでているのだが、やはりメインはここ。最後の花火を見るのもちょうどいいのだ。

「この街にも、こんなにたくさんの人がいたんだねえ」

 浮き浮きが止まらないアスランは、トーゴーの横でキョロキョロと首を回している。

「そうだな。まあ、近隣の町からも来てんだろ。おい、あんまりキョロキョロするな」

 夕方のニュース用なのか、カメラを抱えている地元番組のクルーもいる。外国人は目立つので、どうしてもアスランはカメラを向けられてしまっていた。

 ――――全く……困ったもんだ。

 それでも、トーゴーも子供の頃のことを思い出し、なにか面映ゆい気分になる。あの時代から、やけに遠くに来たものだ。今は、まるで外国人のように祭りを見ている。

 トーゴーはラメリア国籍を取得している。軍の訓練を受けたのは、入隊が国籍取得の手っ取り早い方法だったからだ。
 ただ、成績優秀だったおかげで、彼は軍ではなく国家警察の方に進むことができた。同時に国籍も取得。
 トーゴーは日本人としてでなくラメリア人として生きる選択をしたのだが、日本人という理由もあってアスランの護衛についている。考えてみればおかしな話だとトーゴーは思っていた。

「そういえば、この間ザイカム中尉がコンビニ来た」
「あ? ああ。知ってるが」

 普通の旅行者風の様相で、ザイカムがコンビニを訪れたのを、トーゴーも気付いていた。

「なんか言ってたか?」
「ううん。別に。『王子が働いてる姿は滅多に拝見できないものですから、つい。制服がよくお似合いです』とか言われた」
「そうか」

 あれ以来、何度か連絡を取り合ってはいるが、未だスパイ情報に確たるものはないようだ。
 やはり大使館にスパイがいると言うのは考え過ぎかも。漏れたとしても、意図したものではなかった可能性があると言っていた。

 ――――それはないとは言えない。大使館内での話を、誰か、例えば出入りの商売人が耳にしたのかもしれないし……だが……。

「あ、大貫さん達だ。おおい!」

 公園内に入ると、盆踊りの音楽と太鼓の音が賑やかしい。やぐらの周りでは老若男女が既に踊りの輪を作っていた。その横の屋根のあるスペースで、将棋を勤しむこちらも老若男女が盤を囲んでいた。

「あれ……ミレンの奴、なんだってこんなところに」

 アスランに気付いた大貫が手を振っている。細かい格子柄の浴衣に紺色の帯といった、ごく普通の浴衣を着ている彼の隣には、大人っぽい白無地に織り柄の入った浴衣、深緑の帯を締めたミレンがいた。
 銀髪と銀の双眸に合わせたようなその装いは、美しい彼を際立たせ、セクシーですらあった。

「ミレンさん、やっぱりそれ、似合いますね……」

 誤解は解けたとはいえ、アスランはまだ警戒を解いたわけではなかった。考えてみれば、訓練生の時から友人なわけだ。

 ――――実はトーゴーが好きだったとかも大いにあり得る。

 この場合、トーゴーがミレンを想っていた、という発想である。

「アスランもとってもかわいいですよ。ねえ、トーゴー」

 ミレンの一言に、アスランは瞬時にトーゴーの方を向く。トーゴーはいきなりの質問とその強い視線に、らしくなく狼狽えてしまった。

「あ? あ、ああ」

 その視線をかいくぐるよう、トーゴーは生返事を返すのだった。



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