王子様と一緒。

紫紺

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第91話 夜空に咲く花(ミレン視点)

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 鯉の池周辺の遊歩道。林の中で、二人の男が睨みあっている。その後ろには、ワンピース姿の成田がオロオロしていた。

「誰だ、あんた。外人さんか」
「ええ。そうです。お相手は参加者の方から選んでもらわないと困りますね。彼女は担当者であって参加者ではない」
「ふうん、なんか物知り顔だな。手を放せよ」
「放せませんね。成田さんに謝ってもらうまで」

 グッとここで力を入れる。下川から余裕の表情が消えていく。

「や、やめろ。おまえ、この女のなんだよ」
「ミレンさん、もう、もう、いいですから」

 下川がどうなろうと構わなかったが、ミレンが彼に怪我をさせては大変なことになる。成田はそれが心配になった。

「そうですか? じゃあ、まあ放しましょうか」

 トンっと突き飛ばすようにして肩から手を離すと、下川は掴まれた肩をさすって息を吐く。その隙にミレンは成田の横に身を翻した。

「下川さん、もし私の態度に誤解されたのなら謝ります。ですが、本当にそのような気持ちではないのです。参加者の方からお相手が見つからないのでしたら仕方ありませんが、このようなことは会員規則にも反します」
「会員規則ねえ。まあ、わかったよ。でも、私は酷く傷ついた。このことは、きっちりクレーム付けるからなっ」

 などと下川は捨て台詞を吐き、遊歩道を足早に去っていった。
 だが実際は、ミレンの醸し出す危険な匂いに気圧され、逃げ帰ったのが本音だ。肩に食い込むほどの握力に、下川は心胆寒からしめていた。

「ありがとうございました。ミレンさん」

 張っていた気が一挙に抜けた。成田はミレンに縋るようにして息を吐く。今頃震えが来た。
 成田は下川が何をしようとしたのか想像はできていた。それを考えると震えるほど怖くて吐き気がするほど気持ちが悪い。

「大丈夫ですよ。たまたまこちらを歩いていて良かったです」

 本当にたまたまだったが、成田を救えたのは幸運だったなとミレンは思う。

「ああ、本当に。こちらにはどうして?」
「沙知子さんを探してたんです。あ、そっちも解決してますからご心配なく」

 成田は沙知子が中垣内とどこかに行ってしまったのを思い出した。

「そっちもミレンさんが解決したんですか? 大活躍じゃないですか」
「え? いえいえ、それは、田中さんが」

 まあ、本当は自分もだけど、そこは花を持たせてやるか。

「さあ、成田さん。花火が上がってます。池まで出て、観ませんか? 僕とじゃ物足りないかもですが」
「まさか! ええ。行きましょう。私こそ、お相手には不足でしょうけれど……」

 申し訳なさそうに、成田は上目遣いでミレンを見る。さっきまでアサシンのような鋭い目つきだったミレン。今はもう、まつ毛クルンにぱっちりおメメの童顔ミレンに戻っている。

「ちょうどいいですよ。我々は」
「え? ああ、はい。そうですね」

 成田はミレンの言い様に、妙に納得した。そこに大きな音とともに見事な大花火が夜空に広がり、鮮やかに散っていく。

「わあ、綺麗!」 
「本当だ。やはり日本の花火は素晴らしい。あなたの好きな花が、夜空に咲かせているようじゃないですか」
「ええ、本当に。こんなに花火を綺麗と思ったの、久々です」

 鯉の池のほとりまで行くと、祭り客たちが立ったまま、上を見上げ花火見物に興じている。
 成田とミレンもその集団に混ざり、夜空を彩る花々の輝きに歓声を上げた。



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