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第94話 祭りのあと
しおりを挟む祭りのあとの寂しさは……などと古い曲をつま弾くことはないけれど。なんだかぼんやりしたまま朝を迎えた。
アスランは前の晩に眠れなかったのもあって、興奮してたけど布団に入ったらあっという間に寝た。まあ、いい夢見れたんじゃないかな。
「足がまだパンパンだよ。凄く歩いたから」
言いながら、脛のあたりをさすってる。僕も同様だ。
「そう言えば、昨日は言わずにいたけど……もしかしてショウ、誰かと喧嘩でもした? あれ、どう見ても転んだんじゃないよね」
ええっ。マジか。
「気付いてたのか?」
「そりゃあね。顔から転ぶなんて、お年寄りじゃないんだからさ。昨日は話すと長くなると思って、ショウの言い訳を受け入れたんだよ」
本日もバイトのシフトは無情にも入ってる。まあ、バイトにとっては書き入れ時なので自分から入れてんだけど。
「バイトまで少し時間あるね。珈琲でも淹れようか」
もそもそと起き上がると、アスランは珈琲メーカーを準備する。僕も手早く朝の支度をした。
「で? 沙知子さんと一緒にいたってことは、あいつがやっぱりなにかしたの?」
二人向かい合ってモーニング珈琲を飲む。コンビニのドーナツがあるので朝食代わりだ。
アスランは、昨夜縁台将棋でのことを話してくれた。みんな、沙知子さんが中垣内を一緒にいたので気にしてたと。
「そうなんだ。僕は、ちょうど彼女があいつと歩いているのを見かけてね。心配になって後をつけたんだ」
僕は昨夜起こったことを、さらっとアスランに話して聞かせた。自分をヒーローみたいに飾りたくないし、まあ、ほぼほぼボコられたんだからな。
「ええっ! あいつ、そんなひどいことを!? 呑気に将棋してる場合じゃなかったんだ。ごめん! ショウ」
「いやいや。それはいいよ。さすがにあの馬鹿野郎があそこまで卑怯者とは思わないだろう。それに、結局トーゴーが助けてくれたし」
僕は最後には投石で救われたことを話した。
「え……いや、それ、トーゴーじゃないよ。トーゴーはずっと僕と一緒だったし、大貫さんと将棋指してたんだ」
「な……マジ。そうなんだ? じゃあ……誰が」
僕とアスラン、同時に首を傾げる。だが、すぐに答えは出た。
「ミレンだね。いつの間にか、広場からいなくなってたから」
「うん……それならミレンしかないよ。そうかあ……お礼言わないと。僕に恥をかかせないためか、隠れたままでいてくれたしね」
そこまではわからないけれど、多分、『私が投げました』と宣言するつもりはなかっただろう。
――――なんか、隠れて見られてたというのは、ちょっとハズイけど……。
それでも、助かったのは本当だ。
「ラメリアの国家警察は凄いな。本当に感動するよ」
「ふふん、そうだろ? なにしろ、我が国の自慢の組織だからね」
アスランは誇らしげに言った。
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