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第104話 刺青とプリン
しおりを挟むコンビニにあまり見かけない客がやってきた。アスランに話しかけてたけど、彼自身はあまり気にならなかったよう。でも僕は……。
「よお、どうした? ぼうっとして」
「あ、トーゴー」
ぼうっとしてたのは否定できないけど、なんといいタイミングに来たんだ。
「いや、さっきのお客なんだけど……」
「なにか気になることが?」
トーゴーはサングラスをさっと外して僕を見た。僕は断じて男に興味はないんだけど、カッコよくてドキリとしてしまう。そしてどういうわけか腹が立つ。
いつもの黒っぽいシャツにジャケット。ガタイの良さが立ち姿でわかってしまう。まあ、アスランが好きになる気持ちはわかるよ。
「なんかアスランに話しかけてたんだけどさ」
「ああ。そのようだな」
凄い。そんなのも見てるんだ。
「手首にタトゥー……いや、刺青って感じかな。あった」
僕は声を潜めてトーゴーに伝える。トーゴーは数秒、何も言わず空を見つめる。いや、その視線の先は防犯カメラだ。
「わかった。助かるよ」
すぐに防犯カメラを確かめにいくのかと思ったが、そうはせず、なにか買うつもりなのか棚の前を一回りする。そして冷蔵の棚からプリンを一つ取った。
「これ」
「え? プリン?」
「好きなんだよ」
「はあ……」
ぽかんとする僕に、トーゴーはプリンを手渡した。
「今、トーゴーいなかった?」
レジを済ませたトーゴーが出ていってすぐ、アスランがバックヤードから戻ってきた。
「あ、ああ。なんかプリン買って行ったよ」
「プリン!?」
驚いた様子でアスランが叫んだ。
「なんだよ。好きだって言ってたぞ」
「あ。ああ……うん。そうだね」
中途半端な笑みを僕に向けるアスラン。なんだか変な感じだ。
「それより、さっきなんか話しかけてきたおっさんいただろ?」
「さっきの人? まあ、そんな珍しいことじゃないから……どうかした?」
確かに、アスランを珍しがって話しかけてくるお客さんはいる。たいていがおば様たちだ。
野々宮さんと同世代のその界隈では、アスランは大人気なのだ。というか、若い人は恥ずかしくて声をかけては来ないのだろう。
「手首にタトゥーがあってさ。ちょっと気になって……トーゴーには話しておいたよ」
「そうなんだ。気付かなかったや……」
アスランは不自然に視線を落とす。不安そうなのは明らかだ。
「いや、大丈夫だよ。また来たら、僕が相手するから」
日本でも、お洒落でタトゥーを入れる人はいる。けど、さっきの人はお洒落で入れてる感じはしなかった。
とはいえ、それがアスランに害をなす人とは考え過ぎだろう。少なくともラメリアとは関係ないはず。余計な心配をさせてはと僕は焦ってしまった。
「あ、うん。そうだね。ありがとう、ショウ」
キラキラの青い目を僕に向け、アスランが言った。不安は消えたかな? そう思いながら、僕は今更なことに気付いてしまった。
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