王子様と一緒。

紫紺

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第111話 ラメリア大使館

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 ラメリア共和国の大使館に着くと、文字通りハチの巣をつついたような大騒ぎになっていた。
 僕は雷雨の誘拐未遂の後、1度だけ来たことはあった。それでも玄関入ってすぐのロビーしか知らない。それほど大きな建物ではないけれど、3階建てで中庭には美しい花が咲き誇っていた。

「今、てんてこ舞いでして」

 日本人だと思われる大使館員が、僕らを1階の奥の部屋に案内した。てんてこ舞いしてる人たちは主にフランス語らしい言葉で叫び合っている。

「すぐにザイカム中尉が来られます。アスラン様が拉致された時のことをお話しください」
「わかりました」

 僕らはどうしていいのかわからず、とにかくソファーに腰を下ろした。

「もうなにか、要求があったようですね」

 成田さんが震えた声で言う。膝の上で組んだ両手も震えている。

「今日の3時に取引するって言ってます」
「そうですか……って、沙知子さん、フランス語わかるんですか!?」

 僕と成田さんは、同時に顔を上げた。

「あ……一応、第二外国語にフランス語を取ってます」
「すごい!」
「いや、でも本当に日常会話くらいで……日時のことは何度も言ってるので」
「それでも凄いです。田中さん、ミレンさんに連絡を」
「あ、ああ。そうだな」

 ミレンには大使館から連絡が行っているかもだけど、とにかく気付いたことは送ることにする。僕はミレンにメールをした。すぐに既読がつき、『場所は?』と返信。

「沙知子さん、場所はわかる?」
「それは、まだ未定のようです」

 沙知子さんはドアを少し開け、耳をそばだてている。僕は未定と打ち、わかり次第伝えると続けた。

「今、アスランさんの無事を確認してるみたいです。画像……がある?」
「拉致されてる場所での映像かな。それ、見れないかな。僕たちも」
「でも、場所はミレンさん、わかっているんですよね?」

 成田の問いに、沙知子が今にも泣きそうな顔をして答えた。

「それが……大使館では見失ったみたいなんです。GPS、駄目だったようで」
「な……」

 僕たちが絶句していた時、ドアが不意に開かれた。沙知子さんは驚いて僕の背後に隠れる。詰襟のような服、口元に髭を蓄えた姿勢のいい中年男性が現れた。

「あなた方は、王子が連れ去られた時に遭遇したとか、詳しく教えていただけますか?」

 最初はフランス語で。だが、すぐ背後に控えていた通訳と思しき人物が日本語で言った。

「あなたは……」
「彼はザイカム中尉です。アスラン様やトーゴーと親身にしている方です」

 通訳がそう言うと、ザイカム中尉はさっと握手を求めてきた。確か、コンビニにアスランを訪ねてきたことがある人だ。信用できる人だろう。僕は躊躇わず握手を返す。

「アスランの画像、もしあるなら見せてくれませんか? もしかしたら、なにかわかるかもしれない」

 通訳から聞いたザイカム中尉は、ちょっと悩まし気な表情をしたが、すぐに通訳に命じてくれた。

「承知しました。ただいま持ってきますので。お待ちください」

 通訳は一礼をし、廊下へと消えていった。



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