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第123話 その頃の現在地(多視点)
しおりを挟む☆その頃の田中達。
田中、成田、沙知子の3人は、タクシーに乗っていた。
「タクシー代、大丈夫ですか?」
「あ、私、カード持ってますので」
沙知子の問いに、すかさず成田が応える。田中はバイト生活、沙知子は学生。唯一社会人の成田も、来月早々に退社するのでニート突入だ。
しかし、それでも成田に頼るしかなかった。
「すみません……よろしくお願いします。後程お返しします」
情けない。心の底から田中は思った。
「大丈夫ですよ。大使館からお釣りがくるから」
正確には、大使館からお釣りを出すほど返ってくるという意味。成田は強気にそう言った。
「こんな時になんですが……大貫さん、第1局は駄目だったみたい……」
沙知子がスマホ画面を見て残念そうに言った。ミレンの依頼に沿い、タクシーに乗り込んだが、アスランのことが気にならないはずはない。
それでもどうすることもできないので、とりあえず気を紛らす意味もあり、朗報を期待した。
――――こっちも厳しいかっ。
「もう一局あります。決まったのは一人なので」
だが、田中は思い直したように言う。
「今夜は大貫さん昇段とアスラン解放でお祝いです」
力強く続けた田中に、二人も頷いた。
☆その頃のミレン
ミレンは再び、最初に陣取っていた低層ビルの屋上にいた。横には空になっているハードシェルリュックが置かれている。
その場所からは、閉業中のビジネスホテルの表玄関と、駐車場に続く裏口の両方が見えた。
――――あと10分。こちらは準備万端ですが、さて。
全てが間に合えばいいのだけれど。ミレンはちらりとタブレットを見る。アスランの表情が少し和らいでいるように見えるのは、希望的観測だろうか。
――――いえ、間違いなく、事は進んでいる。
田中達もそろそろ目的地に着くはず。改めてミレンはビジネスホテルを見下ろす。そこに、アスランを連れ去ったものと同じ黒いバンが、駐車場に滑るようにして入ってきた。
――――さあ、役者が揃ってきました。いよいよ最終章の開幕です。
ミレンは屋上の床に伏せ、スコープを覗く。素早く照準を合わせた。
☆その頃のアスラン
後ろでに縛られたままのアスランは、姿勢を崩さず、慌てずにナイフを握る。縛られてからずっと、少しでも緩めようとしてきたかいがあり、ナイフを縄に当てる余裕ができていた。
それでも手首を傷つけずに切るのは難しい。しかもポーカーフェイスでやる必要があるのだ。
――――大丈夫。トーゴーがコツを教えてくれた。その通りにやれば。
少しずつ縄に亀裂が入っていく。一本切れれば後は力を入れれば抜けるはず。
――――よし、行けるっ!
縄が切れる。その時、けたたましくドアを叩く音が部屋中に響いた。
☆その頃のトーゴー
?
※ここからしばらく、三人称多視点の文章となります。
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******
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