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第127話 ザイカムの企み(ミレン視点)
しおりを挟む数日前のことだ。例の刺青男がコンビニにやってきた日。
ミレンはその男の後をつけた。途中で大貫との他愛のない会話もあったが、滞りなくヤツが入っていった事務所を突き止めた。
「田辺金融……ねえ」
しばらくその周りで様子を窺うが、どうもまともな金融業者じゃなさそうだ。
ラメリアでもマフィアの存在はある。違法カジノや薬物で、国民の平穏な日々を脅かす輩だ。南国の平和な国でも普通にあるもの。
――――日本にないわけないよね。
なにか良くないことがアスランに振りかかろうとしているのか。トーゴーとも相談し、ミレンは翌日も、田辺金融を張った。
そこで……あり得ないことを目にしたのだ。
――――あれは……ラメリア大使館員じゃないか。
信じられないことに、その男は日本語を話すラメリア人だった。彼は、人目を憚るようにして田辺金融の事務所に入っていった。
「どう思う?」
『いや……そうか。恐れていたことが……マジだったとはな』
トーゴーから返って来たのは、思いかけない事実だった。
アスランのバイト先であるコンビニに、隠しカメラが設置されていた。それは工作員でなければわからないようなカメラだ。トーゴーも調べるまでは気付かなかった。
彼が田中に放った『プリン』は、カメラの隠語でもある。アスランにも伝わったが、誰の工作かはわからなかった。
「仕掛けたのは、恐らくザイカム中尉だ」
「ザイカム中尉!? まさか、そんなはず」
ない、とミレンは言いかけてやめた。トーゴーが根拠もなくそんなことを言うわけがない。
諜報部であるミレンも、中尉を調べるようなことはしなかったのだが、調べてみてわかった。彼も、違法カジノに手を出していた。そして、フィリップ殿下と彼の一派にそのネタを握られていたのだ。
「それでは、前回の誘拐も……」
「おそらく。失敗して、業を煮やして自分でやって来たのだろう。それか、黒幕に命じられたか……そして、今度は渡りに船というわけだ」
「まさか……田辺金融の連中を使って?」
トーゴーは頷いた。
「ああ。罪は連中に被せて……」
――――アスランの命が危ない。
それは、声に出さずとも二人の共通認識だった。アスランがこの国で殺されれば、兄であるジョルジュ王子は絶対にやってくる。それもまた狙いなのだろう。
「ミレン。俺が信用できるのは、おまえだけだ」
誰もいない月夜の屋上で、静かな瞳のまま、トーゴーはそう言った。
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