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第128話 激闘の終焉(アスラン視点)
しおりを挟むその光景を、アスランはおよそスローモーションビデオのように捉えた。
全ての動きが一瞬で、瞬きすら許されない場面だったからこそ。張り詰めた神経が、その一部始終をコマ送りのようにアスランの視覚から脳へと伝えた。
昼下がりの駐車場。アスランとトーゴーは、数メートル先のザイカム中尉と向かい合っていた。
トーゴーとアスランの距離は少しあり、アスランはすぐにも駆け寄りたかったが、その隙はなかった。
ザイカム中尉はポケットの中の銃を取ろうとしたが、トーゴーの動きの方が早く、中尉は手ぶらでポケットから手を出すことになった。
だがその時、後方に停められていた車から、背の高い男が飛び出してきた。その手には光ものが。
――――拳銃だっ!
アスランが思う間もなく、トーゴーの銃はその男に向き、火を噴いた。手首を撃たれた男の銃が宙に飛ぶ。
と同時に、ザイカムが再び拳銃を手にし、アスランに銃口を向けようと取り出した。アスランは体を傾けようとするが間に合うわけがない。
――ピシッ!
その時、ついさっきも聞いた音が耳を掠める。
「ギャッ!」
瞬間、ザイカムの肩口に血しぶきが舞った。銃とともに倒れ込むと、いつの間にダッシュしたのか、トーゴーが落ちた銃を蹴飛ばした。
――――あ……。
見上げたビルの屋上に人影が見えた。それはようやく立ち上がり、ライフルらしきものを肩にかけている。シルエットにははっきりと見覚えがあった。
――――やっぱり来てくれてたんだ。二人とも、そばにいてくれた。
アスランはそこでようやく気が付いた。拉致された時からずっと、いや、もしかしたらその前から自分は守られていた。
安堵したと同時に緊張が解け、アスランはふらふらと膝を折り、地面にへたり込んでしまった。
「王子様、へたってる場合じゃないぞ。こいつらを縛るから手伝え」
「あ、うん」
尻のポケットから拘束具を取り出し、アスランに渡す。自分は角刈りの男の方に向かった。
「ザイカム中尉、失礼します。救援車がすぐ到着しますので……」
負傷を考慮して前面で拘束する。立場が完全に逆になった。
「なにが失礼するだ。おまえら王室に未来はない! 私には、フィリップ殿下がついているんだ」
とんだ負け惜しみだ。このことが明るみに出れば、フィリップ殿下も逮捕されるのは目に見えている。
「私は知ってるんだぞ。おまえの本性を! おまえがトーゴーに惚れてることもな!」
「な……なにを」
紳士だったはずのザイカムは、今や下品極まりない、三流マフィアみたいな顔つきでアスランを睨みつける。
だが、思わぬ攻撃にアスランは狼狽えてしまった。
「この事態もおまえ達の策略だと証言してやる。王室転覆を企む不届き者だと!」
「そんな馬鹿なこと……」
できるはずはない。そうわかっているのに、ずっと隠してきた事実を突き付けられ、アスランはまともに返答できなかった。
その時だった。いつの間にか入ってきた高級車から、スラリとした青年が降りてきた。
「ザイカム。私の弟を侮辱するのは、それまでにしてもらえるかな」
美しいフランス語がアスランの背中を伝う。ハッとして振り向くと、そこには懐かしい人の姿があった。
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