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第130話 一件落着
しおりを挟む美しい兄弟の抱擁の傍ら、駐車場には次々と新しい車が入ってきた。救急車も何台か。
ザイカムだけでなく、ホテルには彼の手下どもが伸びているようだ。彼らを裁くのが、日本警察なのかラメリア警察なのかは僕にはわからないけれど、とにかく一件落着のよう。
「お疲れ。さすがの腕だったな」
僕のすぐ隣、トーゴーがミレンに話しかけてきた。想像でしかないけれど、この誘拐事件、トーゴーやミレンは最初から予想していたんじゃないだろうか。
僕らが賢明に大使館で情報収集したことも、もしかすると全部知ってた?
「いえ、ヒヤヒヤでしたよ。特に非常口から出てきた男は。あなたが飛びかかってくる前に仕留めないといけなかったですから」
「ふん。俺は信用してたから、飛びかかるつもりはなかった」
「嘘ですよね。それ」
ふふっと小悪魔のように笑うミレン。可愛い顔してるから、そんなふうに見えてしまう。成田さんはそのやり取りを興味深そうに眺めていた。
「田中さん、大貫さんに連絡しないと」
「あ、そうだね。えっと、まだ対局終わってないかもだけど、メッセージ入れておくよ」
沙知子さんに言われ、もう一つの大事なことを思い出した。昇段結果については、まだ将棋連盟の発表がない。対局中なのだろう。
――アスラン無事救出! 大貫さんの帰りを待ってるからね!
朗報を待っている。と打とうして躊躇した。結果がどうであれ、僕らが大貫さんを応援しているのに変わりはない。だから、どんな結果でも胸を張って帰ってきて欲しい。昭和荘に。
「ミレン! あなたが私を救ってくれたんだね。ありがとう!」
ジョルジュ皇太子との再会に涙していたアスランが、ようやく僕らのところにやってきた。まずは、功労者のミレンに抱擁。
「あ、いえいえ。僕は大したことはしてないです」
「それは嘘だ。おまえがいなければ……」
と、トーゴー。けど、ミレンはそれを遮って。
「それを言うなら、田中さんたち、昭和荘メンバーが大活躍でしたよ」
「えっ!?」
これはその場にいたメンバーも、もちろんアスランやトーゴーも同時に驚きの声を上げた。
「そうだったんだ! アキ、心配かけたうえに助けてくれたんだね!」
「あ、アスラン!」
僕の手を握りしめるアスラン。手首の瑕が痛々しい。それから遠慮がちにハグをした。
「なんでもないよ。僕らのやったことなんて。でも……無事で良かった。本当に……」
アスランの髪のいい匂いがふわりと鼻孔に流れてくる。
――――悪い連中に連れ去られ、取り囲まれ、一人で頑張ったんだよな。
僕は画面越しで見た、不安そうなアスランを思い出す。けれど、決して取り乱すようなことはなかった。
――――普段は素直で優しくて、しかもオタク。でも、決して弱くない。さすが王子様だよ。
「あ、アキ。大貫さんは? 結果はどうなったの?」
そして、友人思いのところ。僕らはそんな君が大好きだよ。
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******
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