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その219.やぶへび、そして棒について
しおりを挟むしなくてもいい余計なことをして、かえって事態を悪化させてしまうことを「藪蛇(やぶへび)」と言います。
これは略語で、正しくは「藪をつついて蛇を出す」。
「つついて」ではなく「たたいて」の場合もあります。
草むらを木の棒で叩いたり突いたりして、中に潜んでいる蛇を怒らせてしまい、噛まれてしまう……あーあ、バカなことをして、というヤツですね。
実はこれ、元は「打草驚蛇(だそうきょうだ)」という中国の故事成句のひとつが元となっており、兵法三十六計の第十三計にあたる戦術のひとつでもあります。
草むらの中では不意に棒で草を払ったりすると蛇を驚かせる、つまり何が出てくるかわからないということで、「不用意・不必要な行いは逆に思わぬ対抗措置を招くことがある」という戒め。
三十六計では「戦地の状況がよく分からない場合には偵察を出して反応を探る」という意味でも用いられています。
突発的に前触れもなく行うことを「やぶからぼう」と言います。
これは語源が異なり、日本の江戸時代中期の人形浄瑠璃の一節からで、タケノコを盗みに藪に入った男が、いきなり出てきた棒に驚いたことから「藪から棒」となったのです。
「藪蛇」とは関係ないので、混同しないように気をつけましょう。
藪をつつく以外にも、「棒」が言葉に残っているパターンは多く、相棒、片棒、用心棒など。
「相棒」はいわゆる「パートナー」。
最近ではあの刑事ドラマを一番に思い浮かべてしまいますけど(余談ですが、あのドラマの企画当初のタイトルは「黄金刑事(ゴールデン・コップス)」だったらしいです……変わって良かった)、これは江戸時代の駕籠屋(かごや)が、ふたりで一本の棒をかついで駕籠を運んだことから、協力する時の相手を「棒を共にかつぐ相手=相棒」と呼んだところから来ています。
「片棒をかつぐ」なんて、犯罪まがいで仲間に手を貸すような意味合いで使われることが多いので、あまり良い意味ではないですが、これも本来は「協力して仕事を行う」駕籠屋の棒に由来しています。
「用心棒」は、盗賊などに備えて武器としての棒を用意しておいたことに由来します。
そこから、博徒などが腕利きを雇って警護させる、ボディガードのような役割を「用心棒」と例えて呼ぶようになりました。
昔の引き戸で、外から開けられないように、内鍵の代わりに棒を斜めにして「つっかえ棒」として使った棒を、用心のためにしておく棒ということで「用心棒」と呼んだ、という説もあります。
『藪』つながりで、もうひとつ……。
ちなみに、真相が分からずじまいのことを「藪の中」なんて表現したりしますが、芥川龍之介の作品『藪の中』からきています。
藪の中で起きた殺人について、当事者や目撃者が語るのですが、話す内容がそれぞれ違うために、真相はわからないまま(小説のラストも明確な答えがないまま終わります)。
小説の内容と作品名が、そのまま「慣用句」になって、時代を超えて言葉として残るなんて……。
いやはや、そんな「辞書に載る言葉」を生み出してみたいものですね。
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