追放されたお姫様はおとぎ話のごとく優しい少年に救われたので恩返しします。

進藤 樹

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地上最後のパーティー

「ホントに俺たち、空飛んでるぞ!」

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「――用意はいいな?」

 慶汰は、部屋の隅に移動して、靴紐を結び直すようにしゃがみ込む。するとアーロドロップの龍脈術で姿が見えなくなった。周辺の人は、ほとんどが食事をしていなかったがおしゃべりに夢中で、誰も慶汰が消えたことには気づいていない。
 そしてアーロドロップからも、慶汰の姿が見えなくなっている。アーロドロップは移動経路を確保するため別行動だ。
 慶汰は人の合間を縫って、玉手箱に近づいた。もちろん誰からも気づかれないまま、窓際に立つ。背中がカーテンに触れて少し揺れた時は冷や汗をかいたが、誰にも気づかれなかったのでセーフだ。
 港鷹が玉手箱周辺の人たちに「そろそろビンゴ大会を始めますので、お席の方へ」と促し、港鷹もスタッフに声をかけに行くべく司会台の方へ。
 その一瞬の隙を突いて、慶汰は玉手箱に駆けより、両手でしっかり挟んで持ち上げた。

「あれ? ばぁば、たまてばこ!」

 最初に気づいたのは、先ほど慶汰が受付を担当した、幼き少女だった。

「玉手箱がどうし――えええええ!?」

 お婆さんの叫びが合図となって、会場中の視線が集まる。
 周囲からはまるでポルターガイストのように玉手箱が宙に浮いているように見えるはずだ。アーロドロップはそれを合図に、玉手箱の位置から慶汰の位置を推測し、慶汰を天井まで浮遊させる。こうなると慶汰はアーロドロップに操られるままの透明人形だ。

「わ、なになに!?」
「玉手箱が飛んでる!」
「うそ!? ホントだー!?」

 慶汰は一直線に扉の方へ飛ばされる。
 会場中の人たちが、戸惑いの声をあげながらもスマートフォンのカメラを向けてくる光景には、なんとか悲鳴を堪えた。
 玉手箱には龍脈術が効かないため、慶汰が手放すわけにはいかない。
 入口付近に潜伏していたアーロドロップが扉を開放し、慶汰は速度を落とすことなく廊下へ飛び出す。
 打ち合わせだろうか、廊下で話していたスタッフ二人の頭上を通過し、先ほど確認した窓へ向かう。アーロドロップが窓を開けようとしているのか、一旦慶汰は空中に制止した。後ろから玉手箱を追いかけてくる人たちの声に肝を冷やしながら、慶汰は窓を見つめる。すぐに窓が開いて、慶汰は再び突き動かされるようにして窓の外へと飛び出した。
 三階から飛び出した景色は、他の建物が邪魔で閉鎖的だった。その割に地面は遠く、感触のない龍脈の膜だけが頼りとなると、恐怖に肝も冷える。
 ただ、周辺の建物より高い位置までふわりと上昇すると、慶汰の中で恐怖より感動や興奮が勝った。
 駅周辺には高いビル、少し遠くには大きなマンションの灯りが輝く。光の密度や輪郭から、商業施設の賑わうエリアや住宅街が一望できた。
 夜空の月明かりは薄く、雲の形もおぼろげなのに、まだまだ眠らない街は大通りや線路を煌々と照らす。

「ホントに俺たち、空飛んでるぞ!」
「テンション上げるのはいいけど慶汰、玉手箱落とさないでよ!?」
「ああ! わかってるよ!」

 絶対に帰ってくる。その心意気はあれど、やはり少し不安なのだ。そんな不安を閉じ込めるように、慶汰は玉手箱を力強く抱いた。
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