追放されたお姫様はおとぎ話のごとく優しい少年に救われたので恩返しします。

進藤 樹

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慶汰の覚悟とモルネア争奪戦

「さては不届き者か!」

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 しばらく待っていると、背後からぽんと硬い何かで肩を叩かれた。

「君は誰かね。こんなところで何をしている?」

 振り返ると、目の前に竹のような材質の木刀が突きつけられる。

「ひぃ!?」

 地上の剣道で使う竹刀なら、細い棒状で先端に分厚い布のキャップみたいなものがついていて怪我をしにくい形になっているが、目の前にあるそれは違う。
 竹のような節があり明るい黄緑色をしているが、日本刀のように片刃が研がれて平たく鋭利な形状になっている。先端は鋭く、服の上から身体を貫けそうなほど尖っている。唯一、握る把手部分だけが、竹刀のように白い布が巻かれ、円形の金属の鍔で区切られていた。

「さては不届き者か!」

 髭を蓄えた恰幅のいい男だ。腕も足も筋肉で鈍器のように太く、肌も濃い。慶汰を睨む眼光は鋭く、声も重みがあって圧が強い。

「い、いえ! 俺はアロップと一緒に来てて」
「殿下を愛称呼びだと……? 君、無礼だぞ!」

 しまった、と慶汰は額に手を当てる。早く戻ってきて誤解を解いてくれ、と願ってアーロドロップが入っていった入口を見やると、ちょうど中から人が出てきた。男が一人、玉手箱を抱えている。

「あ! 玉手箱!」

 遠くて顔もよくわからなかったが、唯一無二の玉手箱を持っているということは、アーロドロップの関係者だろう。そうだと思って慶汰が駆け出すと、背後から先ほどの男が追いかけてくる。

「待て! さては、玉手箱を狙った盗人かッ!」
「ちげぇよ!」

 慶汰が涙目になりながら逃げるように走る。当然、玉手箱を持った男を頼るためだ。
 だが、その男もまた、焦ったように慶汰の方へ竹製の刀を向けていた。

「なに、警備がいたのか!」

 ズドン! と音を轟かせ、バスケットボール大の白い輝きが迫る!
 ギョッとして慶汰は横へ跳ねた。空気を唸らせるほどの勢いで放たれた白球は、慶汰を追いかけてきた男へ一直線。

「ふんッ!」

 髭の男は、竹の刀を片腕で振り上げて白球を空へと弾き飛ばした。そして上空で『ずどぉぉんっ!』爆発する。直撃したら死んでいただろう。

「『ふんッ!』『ずどぉぉんっ!』じゃねぇよ、どうなってんだよここの世界観はよぉ!?」

 あたりまえのように竹の刀を持ち歩き、かと思えば砲撃。それを防御。
 キラティアーズがホホジロサメと戦うことを非常識だと言っていたあのリアクションが嘘のようだ。

「くそっ」

 玉手箱を抱えた男が明後日の方向へ逃げ出す。

「え、ちょっと!? あんたガチの悪者なのかよ!?」
「待たんかぁ!」

 慶汰は巨漢に追われながら、玉手箱を抱える男を追いかけた。なんだこの状況、と嘆きながらも全力疾走。
 夜闇の中、シルエットからわかる体格と、緑色の羽織を着ていることが辛うじて見えるくらいなので、見失うわけにはいかない。
 男が飛び込んだ先は、巨大な白い薬箱のような建物――昼間キラティアーズから説明を受けた薬事院だ。
 入口の扉の向こうに男が消えて、いざ慶汰も飛び込もうとしたところで、中から三人分の、うぎゃ、という短い悲鳴が聞こえる。

「お、おい!?」

 建物に飛び込んだ慶汰が見たのは、乱暴に開かれた引き戸と、その先に見える小部屋。
 小部屋に入ると、和装姿の中肉中背の男が三人、床に尻餅をついていた。そして三人の中間地点に、竹の刀と、玉手箱が蓋を閉じた状態で転がっている。

 ――どいつがさっき玉手箱を持っていた男だ……!?
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