追放されたお姫様はおとぎ話のごとく優しい少年に救われたので恩返しします。

進藤 樹

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老化現象解明の手かがり

「いいわよ、つきあってあげようじゃない!」

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 しばらくモルネアを抱きしめてから、アーロドロップが再び手を前に出す。
 再表示したモルネアが、その場でくるりと反転し、ぱたぱたと耳のようなひれを動かした。

〈慶汰も、ありがとう!〉

 元気いっぱいのお礼を告げられて、慶汰の頬が緩む。

「どういたしまして。急にいなくなった時はびっくりしたけど、ともあれ無事でなによりだよ」
〈うん!〉
「なんで慶汰には素直に懐いてるわけ……?」

 アーロドロップは、涙声になりながらも不服そうに言った。そして、わざとらしく咳払いして、表情を真剣な雰囲気に戻す。

「モルネア、玉手箱の中にいる間、なにかわかったことはあった?」
〈それがどうも不鮮明でさぁ。六〇〇年もの間龍脈チャージができてなかったせいか、うまく読み取れなかったんだよねぇ〉
「わかる範囲でいいから、もっと詳しく話してくれる?」
〈もちろん! 玉手箱には今、なにひとつとして龍脈術が設定されてなかったよ!〉
「ちょっと待ってくれ。浦島太郎が老化したのは龍脈術の仕業なんじゃなかったのか?」
「そうだけど、この場合はニュアンスが違うわ、慶汰」

 慶汰が眉間に皺を寄せると、アーロドロップは左手の指を二本立てた。

「龍脈術は大きく二つに大別できるの」
「蓋を開けたら発動するのか、それとも蓋を開けるまで効力を発揮し続けていたのか……みたいな話はキティとしたけど」
「それとは別に、何度でも発動できるタイプと、一回使ったら二度と発動できないタイプの、二つのタイプがあるのよ。まあほとんどの龍脈術が何度でも使用可能なものばかりだけどね」
「使い捨てもあるのか……」
「何度も使う前提の場合、道具や術式を傷つけない出力での運用を余儀なくされるわ。ただ、使い捨てならそんなこと気にしなくていいでしょ」
〈それが使い捨て最大の利点だね~〉
「追放前に姉上も言っていたけれど、地上じゃ龍脈チャージができないから、そういう意味でもデメリットが気にならないわね。なにより、そこからわかる重要なことがあるわ」

 慶汰は顎に手を添えて答えた。

「六〇〇年前の乙姫様は、浦島太郎による玉手箱の龍脈術発動回数を、一度きりと定めて龍脈術を仕掛けていた……?」
「そう!」

 アーロドロップが不敵な笑みを浮かべて断言する。

「それが確定しただけ一歩前進よ! モルネア、他にはどう!?」
〈う~ん、地上に行く前にキティが予想していたとおり、龍脈術は一種類だけだったと思うな~〉
「たった一つの龍脈術で、浦島太郎を老化させた……結局、その意図がわからないのよね……。いったい何があったら、浦島太郎をお爺さんにしようって思うわけ?」
「キティともその話はしたんだよな……ただ、推理の一つも出せなかったけど」

 夜風がそよぐ。ささやかな花の香りと、肌を撫でる優しい感触に応援されながら思考を巡らせた。しばらく議論を繰り広げたが、結局ホワイダニットで行き詰まる。

「だー、ダメだ! いくら考えても思いつかねぇ!」
「見方を変えて考える必要があるかもね……一旦今日は解散して、気分転換でもしましょうか」

 アーロドロップの溜息を聞いて、慶汰はハッと忘れていた話題を思い出す。

「そういえばアロップ、龍迎祭の日って空いてるか?」
「あ、そういえば。姉上から聞いてたの、すっかり忘れてた」
「せっかくだから、こっちの祭りがどんなものか見てみたくてさ。その、なんだ――」

 慶汰はわざとらしく咳払いして、シンプルな誘い文句を口にする。

「俺と一緒に、回ってくれないか?」

 キラティアーズにからかわれたことを思い出して、つい緊張から声が揺れた。
 もっとも、どういうわけか、アーロドロップの方が動揺が大きいらしい。

「えっ、あの、ちょ……!」

 両目をまんまるに開いて、頬を紅潮させている。
 おかげで、慶汰はすぐに気を取り直せた。

「だ、大丈夫か……?」

 声をかけると、アーロドロップもすぐにハッとして、髪が波立つほどに首を左右に振る。

「な、なんでもないわ! どうせなにも知らずに言ったんでしょ!?」
「え……?」

 既にキラティアーズが話を通しているはずだ。サプライズのことを見抜かれたのだろうかと思うと、下手に踏み込むわけにもいかず、慶汰は回答に困った。

「いいわよ、つきあってあげようじゃない!」

 しかしどうも、様子がおかしい。サプライズで誕生日を祝ってくれると知ったとして、このような返答になるだろうか。

「どうしたんだ、急に……」

 突然上から目線になったアーロドロップの態度の変化に戸惑う慶汰に、デフォルメされた顔をニヤニヤさせたモルネアが言った。

〈知~り~た~い~?〉
「モルネア! 言っちゃダメ!」

 湯気すら出しそうなほどに赤くなったアーロドロップが右手をぎゅっと握り締めて、モルネアは強制的にネイルコアへ封じ込まれてしまった。
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