24 / 26
24.その王妃様は魔法を使えたか
しおりを挟む
王国の発展に大きく寄与した有名な王妃がいる。
彼女は女神の化身と称され、国王に愛され、貴族たちにも愛され、そして当時の民らから絶大な支持を得た。
最近はその有名な王妃に対して『先祖返りによる魅了の魔法を使えたのではないか』と疑う歴史学者が増えている。
その説を推す学者たちは、とりわけ彼女が悪い方向にその能力を使っていたとは語らない。
彼女は生まれながらに魅了の魔法を備えていたが、彼女自身は生涯何も知らぬまま気付かぬままに、その恩恵を受け取っていただけではないか、というのが彼らの一様な推論だ。
ご存知の通り、現代では魅了魔法は禁忌である。
ひとたび魅了魔法を使える者が現われれば、即拘束だ。
命を奪うようなことはないにしても、魔法を無力化する腕輪が付けられ、生涯に渡って厳しい監視下に置かれることとなる。
当時はまだその危険な魔法の存在が認識されていなかったとしても。
自分にそれが使えると気付いた人間ならば、悪用までとは言わずとも、自身の欲を満たすために使用してしまうものではないか。
ではなぜその王妃に関して、それは無かったと歴史学者たちが胸を張って宣言するのか。
それは彼女に関する種々の記録のすべてが、まさに女神と称された通りの清廉潔白な美しい人であったと語っているからに違いない。
だからこそ、魅了魔法所有説を有力視する歴史学者たちからも、今なおこの王妃は友好的に指示され続けている。
そういう意味では、現代においても我々は彼女に魅了魔法を掛けられ続けているのかもしれない。
そもそも残る当時の記録は、王妃に魅了された人間が残したものと考えれば、我々はその影響下にあるとも言えよう。
美しい肖像画もまた、描いた絵師が魅了されていたとすれば、本来の彼女の姿であったかどうかも定かではない。
魅了魔法は時を超えるか──。
答えの出ない問いはさておき、彼女が王国を発展させた歴史的事実は、いかに魅了された人間が記録していたとしても捻じ曲げようのない功績を現代にまで残している。
それはひとえに、彼女の興味があるものに偏っていたせいであろう。
他者からの愛情も称賛も願うことなく。
金銀財宝には目もくれず。
求めることのない彼女の愛は、一心に人でないものへと向かった。
それは彼女が公爵家の生まれであり、最初から恵まれた環境にあって、何かを求める必要がなかった、という理由も考えられた。
しかし彼女は生まれてすぐに母親を亡くしているという点において、生まれながらにすべてが満たされていたとも言えないだろう。
しかし彼女は亡くした人から受けられたものを外に求めなかった。
いや、求めたのかもしれない。
はたして王妃がそれらに自身と同じ愛情を求めていたか、それは分からない。
だが彼女の手記を読む限り、彼らといることで彼女が大層幸せであったことは確かである。
その王妃は生涯に多くの猫を愛した。
彼女は女神の化身と称され、国王に愛され、貴族たちにも愛され、そして当時の民らから絶大な支持を得た。
最近はその有名な王妃に対して『先祖返りによる魅了の魔法を使えたのではないか』と疑う歴史学者が増えている。
その説を推す学者たちは、とりわけ彼女が悪い方向にその能力を使っていたとは語らない。
彼女は生まれながらに魅了の魔法を備えていたが、彼女自身は生涯何も知らぬまま気付かぬままに、その恩恵を受け取っていただけではないか、というのが彼らの一様な推論だ。
ご存知の通り、現代では魅了魔法は禁忌である。
ひとたび魅了魔法を使える者が現われれば、即拘束だ。
命を奪うようなことはないにしても、魔法を無力化する腕輪が付けられ、生涯に渡って厳しい監視下に置かれることとなる。
当時はまだその危険な魔法の存在が認識されていなかったとしても。
自分にそれが使えると気付いた人間ならば、悪用までとは言わずとも、自身の欲を満たすために使用してしまうものではないか。
ではなぜその王妃に関して、それは無かったと歴史学者たちが胸を張って宣言するのか。
それは彼女に関する種々の記録のすべてが、まさに女神と称された通りの清廉潔白な美しい人であったと語っているからに違いない。
だからこそ、魅了魔法所有説を有力視する歴史学者たちからも、今なおこの王妃は友好的に指示され続けている。
そういう意味では、現代においても我々は彼女に魅了魔法を掛けられ続けているのかもしれない。
そもそも残る当時の記録は、王妃に魅了された人間が残したものと考えれば、我々はその影響下にあるとも言えよう。
美しい肖像画もまた、描いた絵師が魅了されていたとすれば、本来の彼女の姿であったかどうかも定かではない。
魅了魔法は時を超えるか──。
答えの出ない問いはさておき、彼女が王国を発展させた歴史的事実は、いかに魅了された人間が記録していたとしても捻じ曲げようのない功績を現代にまで残している。
それはひとえに、彼女の興味があるものに偏っていたせいであろう。
他者からの愛情も称賛も願うことなく。
金銀財宝には目もくれず。
求めることのない彼女の愛は、一心に人でないものへと向かった。
それは彼女が公爵家の生まれであり、最初から恵まれた環境にあって、何かを求める必要がなかった、という理由も考えられた。
しかし彼女は生まれてすぐに母親を亡くしているという点において、生まれながらにすべてが満たされていたとも言えないだろう。
しかし彼女は亡くした人から受けられたものを外に求めなかった。
いや、求めたのかもしれない。
はたして王妃がそれらに自身と同じ愛情を求めていたか、それは分からない。
だが彼女の手記を読む限り、彼らといることで彼女が大層幸せであったことは確かである。
その王妃は生涯に多くの猫を愛した。
11
あなたにおすすめの小説
『恋心を凍らせる薬を飲みました』 - 残りの学園生活、どうぞご自由にお遊びください、婚約者様
恋せよ恋
恋愛
愛されることを諦めた。だから、私は心を凍らせた。
不誠実な婚約者・ユリアンの冷遇に耐えかねたヤスミンは、
伝説の魔女の元を訪れ、恋心を消し去る「氷の薬」を飲む。
感情を捨て、完璧な「人形」となった彼女を前に、
ユリアンは初めて己の罪と執着に狂い始める。
「お願いだ、前のように僕を愛して泣いてくれ!」
足元に跪き、涙を流して乞う男に、ヤスミンは冷酷に微笑む。
「愛?……あいにく、そのような無駄な感情は捨てましたわ」
一度凍りついた心は、二度と溶けない。
後悔にのたうち回る男と、心を凍らせた冷徹な公爵夫人の、
終わりのない贖罪の記録。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
「君を愛することはない」と言われたので、私も愛しません。次いきます。 〜婚約破棄はご褒美です!
放浪人
恋愛
【「愛さない」と言ったのはあなたです。私はもっとハイスペックな次(夫)と幸せになりますので、どうぞお構いなく!】
侯爵令嬢リディアは、建国記念舞踏会の最中に、婚約者である王太子レオンハルトから婚約破棄を宣言される。 「君を愛することはない!」という王太子の言葉は、国中に響く『公的拒絶誓約』となってしまった。
しかし、リディアは泣かなかった。 「承知しました。私も愛しません。次いきます」 彼女は即座に撤退し、その場で慰謝料請求と名誉回復の手続きを開始する。その潔さと有能さに目をつけたのは、国の行政を牛耳る『氷の宰相』アシュ・ヴァレンシュタインだった。
「私の政治的盾になれ。条件は『恋愛感情の禁止』と『嘘がつけない契約』だ」
利害の一致した二人は、愛のない契約結婚を結ぶ。 はずだったのだが――『嘘がつけない契約』のせいで、冷徹なはずの宰相の本音が暴走! 「君を失うのは非合理だ(=大好きだ)」「君は私の光だ(=愛してる)」 隠せない溺愛と、最強の夫婦による論理的で容赦のない『ざまぁ』。
一方、リディアを捨てた王太子は「愛さない誓約」の呪いに苦しみ、自滅していく。 これは、悪役令嬢と呼ばれた女が、嘘のない真実の愛を手に入れ、国中を巻き込んで幸せになるまでの物語。
愛する女性を側室に望むのなら、いっそ私との婚約は解消してほしいのですが?
四折 柊
恋愛
公爵令嬢ジョゼフィーヌには好きな人がいた。その人は隣国の王子様リック。ジョゼフィーヌはリックと結婚したくて努力をしてきた。そして十六歳になり立派な淑女になれたと自信を得たジョゼフィーヌは、リックにプロポーズをしようとした。ところが彼に婚約者がいたことが発覚し悲しみに暮れる。今まで確認しなかった自分も悪いが、なぜかリックも家族もそのことを教えてくれなかった。そんなときジョゼフィーヌに婚約の打診が来た。その相手は自国のアルバン王太子殿下。断りたいが王命が下り仕方なく受け入れた。それなのに、ある日夜会でアルバンが可憐な令嬢に一目惚れをした。その後、アルバンはその令嬢を側室にしたいと望んだので、お互いのために婚約を解消したいと申し出たが拒絶されて……。ジョゼフィーヌの未来はどうなるのか?!
円満離婚に持ち込むはずが。~『冷酷皇帝の最愛妃』
みこと。
恋愛
「あなたと子を作るつもりはない」
皇帝シュテファンに嫁いだエリザは、初夜に夫から宣言されて首をかしげる。
(これは"愛することのない"の亜種?)
前世を思い出したばかりの彼女は、ここが小説『冷酷皇帝の最愛妃』の中だと気づき、冷静に状況を分析していた。
エリザの役どころは、公爵家が皇帝に押し付けた花嫁で、彼の恋路の邪魔をするモブ皇妃。小説のシュテファンは、最終的には運命の恋人アンネと結ばれる。
それは確かに、子どもが出来たら困るだろう。
速やかな"円満離婚"を前提にシュテファンと契約を結んだエリザだったが、とあるキッカケで彼の子を身ごもることになってしまい──?
シュテファンとの契約違反におののき、思わず逃走したエリザに「やっと見つけた」と追いすがる夫。
どうやら彼はエリザ一筋だったらしく。あれ? あなたの恋人アンネはどうしたの?
※小説家になろう様でも掲載しています
※表紙イラスト:あさぎかな先生にコラージュアートをいただきました
※毎朝7時に更新していく予定です
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました
音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。
____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。
だから私は決めている。
この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。
彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。
……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる