【完結】どくはく

春風由実

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あなたの告白⑥

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 怒っているのかって。
 そうだとも、怒っているよ私は。

 これまでだって、大分我慢し耐えてきたんだ。


 彼女と出会ってからの私は、まず公的に彼女と近付くことが許されなかった。

 紹介があった時点で薄々は勘付いていたかもしれないが、彼女には私との将来の話が伝えられていなかったからね。
 周囲にも確定前に知られるわけにはいかなかった。

 すると会えるのは、私が公爵邸に足を運んだときに、彼女が偶然そこにいるときだけ。

 ん?私なら計画的に会えるよう予定を調整していただろうって?

 それはね。公爵家には将来有望な素晴らしい令息殿がいるのだから。
 協力はして貰ったとも。
 持つべきものは友人だったね。

 それでも頻繁に会えるわけではないし、あの頃は何も出来ない自分がただただ悔しかった。

 彼女は平気に見えていても、当時は未成年の少女だ。
 大人たちがもっと守るべきだったと思わないか?
 伯爵家からすぐにでも救い出したくて交渉もしてきたが、いつまでも許して貰える日は来なかった。

 そうこうしているうち、ついにかの人らが動き始めてね。

 それはいいんだよ。それは。
 そこでどうしてか、私ではない別の仮初の婚約者が彼女に用意されていた。

 ふざけるなと思ったよね。

 しかもよくよく聞けば、もしも改心し上手くやっていけるなら、そのまま二人で伯爵家を再生させる、そういう道も用意されていると言うではないか。

 ふざけるなと思ったよね。

 それも彼女のためになるものが何もなく、あの男は選ばれていたのだよ?

 あの役目はね、令息への恩情だった。
 
 調書に残されることはなかったが、あの令息は危うい遊びに手を付けたんだよ。
 相手には触れられないから、そこは君が好きに想像しておくといい。

 即刻処分で良かったところ、どちらから誘ったかという点を考慮してのお詫びが入った。
 もっと簡潔に言ってしまえば、方々に叱られたとはいえ、幾晩か楽しめたから、最後に可能性くらい与えてやりたいという話だった。

 ふざけるなだよ。
 あんな男に掛けるなよ。それも安っぽい恩情をな。


 伯爵家の後始末としては、彼女を救い出す役として、最初から私が婚約者になれば良かったんだ。

 長女への虐待だけでは理由も弱かろうが、二人で現当主に不正を突き付け、全員まとめて田舎に隠居させてしまえば、それで済んでいただろう?
 あの男と共に伯爵家存続の未来が選択出来たなら、別に私が婿入りだって構わなかったはずだ。

 それで何と言われたと思う?

 派手にいきたいだと。
 ふざけるなだよ。

 私が本気で怒っていると分かれば、かの人らはね、妹も同じく女公爵の孫だから、どうしても適切に処理したいのだと言う。

 祖母や伯父からの身内への優しさだって?
 君はそれを本気で言っていないな?

 あぁ、そうだ。
 姉妹どちらも女公爵の孫として相応しい結末が望まれていた。

 あの祖母以外は、分かりやすい者たちだったからね。
 妹があの男を気に入ること。あの男の気が妹へと流れること。
 すべて計算してあったのだろう。

 あれであの二人は、身分よりも愛を選んだ女公爵の孫とその伴侶として、これからを生きていくわけだけれど。


 そうは言ってもだよ。
 いくら計算済みだったとして。
 あの時点で、その未来は確定していたわけではないだろう?

 私はとても納得なんて出来なかった。
 心配で心配で堪らなかったんだ。

 それは違う。
 彼女があんな男を選ぶとは思っていなかった。
 問題はそこではないんだ。

 彼女が相手だよ?
 あの令息も彼女を愛してしまったらどうなっていた?

 それで彼女のために改心し、本当に夫婦になっていたらどうしてくれていたんだ!

 万が一にもそうなったときには、私には別のもっといい領地を授けると言って頂いたが、そんなことはどうでもいい。

 私はこの身に余る幸運を逃すつもりがなかった。


 彼女と出会う前は、生まれてこの方、将来の伴侶に期待したことはなかったよ。
 すべて勝手に決められ、それを受け入れることが、この国で私が生かされる意味だということは分かっていたからね。

 そこに突如現れたのが彼女だ。

 好きな人と共に生きられる未来が急に目のまえに開けたのだよ?

 彼女は私の幸運の女神で、今さら手放すなんてとんでもない。


 だから私は令息と共にあの家に入ることにした。
 理由をいくつ並べても、誰もがなかなか頷いてはくださらなかったが。
 大分粘ったよ。私の粘り勝ちだね。



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