「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています 【完結】

日下奈緒

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第六章 包み込むような愛 ②

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静かな風の中、私の鼓動が、カイルにだけ届いてしまいそうで、胸が熱くなる。

この人は――やっぱり、本気で私を見てくれている。

私達は、馬車を離れて、宮殿の庭をゆっくりと歩いた。

日が落ちかけていて、空は茜色に染まり、花壇に植えられた花々が柔らかな風に揺れていた。

「セレナ。」

あんな話をしたばかりなのに、カイルは何も言わず、私の手をそっと握ってくれる。

その温もりが、かえって胸を締めつけた。

「不満があるわけじゃないんです。」

そう伝えると、カイルは目をパチクリと瞬かせた。

「でも……不安なんです。」

私の声が、かすかに震えた。

「不安……?」

繰り返すようにカイルが囁く。その目は、優しくもどこか切なげだった。

「本当は……ユリウスへの復讐のために、私を選んだだけで。それが終わった今、カイルにとって私は……もう必要じゃないんじゃないかって……」

言い終わる頃には、目の奥が熱くなり、視界が滲んでいた。

気づけば、一粒の涙が、頬を伝って落ちていた。

「……セレナ。」

カイルは立ち止まり、私の肩を包み込むように抱き寄せた。

そして、濡れた頬に指先で触れ、やさしく涙を拭う。

「馬鹿だな、君は。」

囁きは、まるで愛おしむようだった。

「君が必要なのは、今も、これからも、ずっとだよ。」

その声が、胸に深く染みていく。

「ユリウスへの復讐なんて、ただのきっかけだ。君と婚約できたのが、あの時だったから、それに乗っただけ。……でも、君に触れて、君の心に触れて、もうとっくに俺は、後戻りできなくなってる。」

私の目を覗き込むように、カイルは言った。

「君がいない未来なんて、俺は考えられない。」

まっすぐな瞳に、私の不安は少しずつ溶けていった。

ああ――この人は、ちゃんと、私を見てくれている。

その日は久しぶりに、カイルが私の屋敷を訪れてくれた。

「お忙しい中、ありがとうございます。」

そう言って頭を下げた私に、カイルはふわりと微笑み、小さなブーケを差し出す。

「ええっと……今日は何かの記念日だったかしら?」

首をかしげる私に、カイルは肩をすくめるようにして言った。

「セレナに久しぶりに会えた記念日だよ。」

その言葉に、思わず笑みがこぼれた。

変わらない。あの頃と。

――あの幼い日。庭でこっそり抜け出して、花を摘みに行った。

「これはセレナに似合う」って、手のひらいっぱいの白い花を差し出してくれた、あの子供の殿下と同じ。

「ありがとうございます。」

ブーケを両手で受け取ると、淡い香りが鼻先をくすぐった。

白と薄紫の小さな花々。慎ましくて、可憐で、どこか私自身を映しているようだった。

「本当はもっと会いに来たかったんだけどね。どうしても、公務が立て込んでて。」
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