社長は身代わり婚約者を溺愛する

日下奈緒

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第3話 ご令嬢

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そしてまた、信一郎さんから連絡が来て、美術館に行くのは、来週の日曜日になった。

「ところで、何を着て行こう。」

私は自分のクローゼットを、覗き込んだ。

カジュアルな服装ばかりで、女の子らしい服なんて、一つもない。


「これは、新しい服買わなきゃ。」

私は財布の中身を見た。

「うん、まだある。」

私は財布をバッグの中に入れた。


「お母さん、夕食の買い出し、行ってくるよ。」

「いつも有難うね。」

お母さんはメモに、今日買うリストを書き、お金を私に渡した。

「あと、スーパーじゃなくてモールに行ってくるから、少し遅くなるかもしれない。」

「そう。気を付けて行ってくるのよ。」

基本、お母さんは私の言う事に、口出ししない。

その分、私を信じてくれているんじゃないかと思う。


私は自転車を漕ぐと、いつものスーパーよりも遠い、ショッピングモールへと向かった。

女の子らしい服装。

という事は、スカートか。

何年振りだろう。スカートを履くのは。

私はショッピングモールに着くと、いつも服を買っている店に行った。

あった。スカートの類。

私は迷わずにロングスカートを手に取った。


その時、隣の二人組の女の子達が、話しているのが聞こえた。

「今流行は、マーメイドラインだよ。」

「下がフレアになっているモノね。私、一つ買おうかな。」

私は横目でチラ見した。

確かに、下がフワッと広がっていて、可愛い。

でも、私に似合う?


私は、近くの鏡を見た。

スタイルだって、良くない。

髪だって、芹香みたいに長くないし、巻いてもいない。

そう、芹香だったら、マーメイドスカートも似合うのに。

そう思うと、グッと手を握った。


「芹香だったら……」

そうなんだ。信一郎さんが会うのは、私であって私じゃない。

芹香の代わりなんだ。

芹香だったら、絶対マーメイドスカート履くはず。

私は、女の子達が去った後、マーメイドスカートを手に取った。


どれがいいかな。

芹香が着そうなスカート。

彼女だったら、地味な色は履かないだろう。

芹香だったら。

私の頭の中は、芹香でいっぱいになった。


「はぁー。」

それだけでも疲れた。

「そうだ。信一郎さんは、お淑やかな方が好きなんだよね。」

私は黒色のスカートを手に取った。

この色だったら、お淑やかに見えるかも。

値段も4,000円。

買えない訳じゃないし、安っぽくもない。

「決めた。」

私はそのスカートを持って、レジに向かった。


「試着はされますか?」

「試着……」

もし、当日履いてみていまいちだったら、取り返しがつかない。

「はい、試着してもいいですか?」

いつもは試着なんて、しないのに。
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