11 / 105
第3話 ご令嬢
③
しおりを挟む
電車で10分の場所に、美術館はあった。
「芹香さん。」
声のする方を見ると、信一郎さんが近づいて来た。
「信一郎さん……えっ、美術館で待ち合わせじゃ。」
「待てなくて、来てしまいました。」
信一郎さんは、私を見てニコッと笑う。
「と言うのは嘘で。芹香さんに一秒でも早く会いたくて。」
胸がキュンとなった。
「そうですか。」
カバンを持つ手が、恥ずかしがっている。
「行きましょう。」
「はい。」
駅から二人で美術館に向かい、私達は受付の前に立った。
「こちらのチケットで。」
受付の女性が、信一郎さんが出したチケットを見ると、途端に騒ぎ始めた。
「どうぞ。お楽しみ下さい。」
「ありがとう。」
お金を払うことなく、私達は常設展示場へと向かっている。
「お金払わなくて、よかったの?」
「前売り券だからね。」
「でも、受付の人達驚いてましたよ。」
「ああ、特別なチケットだったからね。」
「特別?」
そして常設展に着いて、信一郎さんはもう一度チケットを出した。
「この美術館にはね、僕の家が資金を1/3援助しているんだ。」
「えっ……」
私はそこで立ち止まってしまった。
「そのお礼として、毎年無料のチケットが送られてくるんだ。」
「……凄いですね。」
入り口から見える、高そうな絵画達。
それが、信一郎さんの家が寄付したお金で、買われているだなんて。
世の中には、そんな美術品とか、工芸品を惜しげもなく買える人達がいるのだ。
「芹香さん、行きましょう。」
「あっ、はい。」
もう芹香の名前で、信一郎さんに呼ばれるのにも慣れた。
常設展に入って、見える世界は広がった。
たくさんの素晴らしい絵。
一つ一つ、新しい世界に連れて行ってくれる。
「どうです?」
信一郎さんは、私の顔を覗き込んだ。
「ええ。どれも素晴らしいモノばかりで、楽しいです。」
「それはよかった。」
ふと信一郎さんの横顔を見た。
美術館にお金を寄付しているだなんて、彼の家は本当にお金持ちなんだ。
それこそ芹香の家と同等。
ううん、それ以上の家なのかもしれない。
「どうしました?芹香さん。」
「いえ、何でも。」
私が次の絵に行くと、信一郎さんが付いてきた。
「僕は何でも話してくれた方がいいなぁ。」
信一郎さんを見ると、真剣な目をまた見る事になった。
「……信一郎さんの家の事です。」
「僕の家が何だって?」
「お金持ちで、羨ましいなぁって。」
すると信一郎さんは、クスッと笑った。
「芹香さんの家も、資産家じゃないですか。」
「芹香さん。」
声のする方を見ると、信一郎さんが近づいて来た。
「信一郎さん……えっ、美術館で待ち合わせじゃ。」
「待てなくて、来てしまいました。」
信一郎さんは、私を見てニコッと笑う。
「と言うのは嘘で。芹香さんに一秒でも早く会いたくて。」
胸がキュンとなった。
「そうですか。」
カバンを持つ手が、恥ずかしがっている。
「行きましょう。」
「はい。」
駅から二人で美術館に向かい、私達は受付の前に立った。
「こちらのチケットで。」
受付の女性が、信一郎さんが出したチケットを見ると、途端に騒ぎ始めた。
「どうぞ。お楽しみ下さい。」
「ありがとう。」
お金を払うことなく、私達は常設展示場へと向かっている。
「お金払わなくて、よかったの?」
「前売り券だからね。」
「でも、受付の人達驚いてましたよ。」
「ああ、特別なチケットだったからね。」
「特別?」
そして常設展に着いて、信一郎さんはもう一度チケットを出した。
「この美術館にはね、僕の家が資金を1/3援助しているんだ。」
「えっ……」
私はそこで立ち止まってしまった。
「そのお礼として、毎年無料のチケットが送られてくるんだ。」
「……凄いですね。」
入り口から見える、高そうな絵画達。
それが、信一郎さんの家が寄付したお金で、買われているだなんて。
世の中には、そんな美術品とか、工芸品を惜しげもなく買える人達がいるのだ。
「芹香さん、行きましょう。」
「あっ、はい。」
もう芹香の名前で、信一郎さんに呼ばれるのにも慣れた。
常設展に入って、見える世界は広がった。
たくさんの素晴らしい絵。
一つ一つ、新しい世界に連れて行ってくれる。
「どうです?」
信一郎さんは、私の顔を覗き込んだ。
「ええ。どれも素晴らしいモノばかりで、楽しいです。」
「それはよかった。」
ふと信一郎さんの横顔を見た。
美術館にお金を寄付しているだなんて、彼の家は本当にお金持ちなんだ。
それこそ芹香の家と同等。
ううん、それ以上の家なのかもしれない。
「どうしました?芹香さん。」
「いえ、何でも。」
私が次の絵に行くと、信一郎さんが付いてきた。
「僕は何でも話してくれた方がいいなぁ。」
信一郎さんを見ると、真剣な目をまた見る事になった。
「……信一郎さんの家の事です。」
「僕の家が何だって?」
「お金持ちで、羨ましいなぁって。」
すると信一郎さんは、クスッと笑った。
「芹香さんの家も、資産家じゃないですか。」
0
あなたにおすすめの小説
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
男に間違えられる私は女嫌いの冷徹若社長に溺愛される
山口三
恋愛
「俺と結婚してほしい」
出会ってまだ何時間も経っていない相手から沙耶(さや)は告白された・・・のでは無く契約結婚の提案だった。旅先で危ない所を助けられた沙耶は契約結婚を申し出られたのだ。相手は五瀬馨(いつせかおる)彼は国内でも有数の巨大企業、五瀬グループの若き社長だった。沙耶は自分の夢を追いかける資金を得る為、養女として窮屈な暮らしを強いられている今の家から脱出する為にもこの提案を受ける事にする。
冷酷で女嫌いの社長とお人好しの沙耶。二人の契約結婚の行方は?
Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?
キミノ
恋愛
職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、
帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。
二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。
彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。
無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。
このまま、私は彼と生きていくんだ。
そう思っていた。
彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。
「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」
報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?
代わりでもいい。
それでも一緒にいられるなら。
そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。
Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。
―――――――――――――――
ページを捲ってみてください。
貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。
【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳
大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。
でも、これはただのお見合いではないらしい。
初出はエブリスタ様にて。
また番外編を追加する予定です。
シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。
表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。
再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです
星空永遠
恋愛
6年前、ホームレスだった藤堂樹と出会い、一緒に暮らしていた。しかし、ある日突然、藤堂は桜井千夏の前から姿を消した。それから6年ぶりに再会した藤堂は藤堂ブランド化粧品の社長になっていた!?結婚を前提に交際した二人は45階建てのタマワン最上階で再び同棲を始める。千夏が知らない世界を藤堂は教え、藤堂のスパダリ加減に沼っていく千夏。藤堂は千夏が好きすぎる故に溺愛を超える執着愛で毎日のように愛を囁き続けた。
2024年4月21日 公開
2024年4月21日 完結
☆ベリーズカフェ、魔法のiらんどにて同作品掲載中。
お前が欲しくて堪らない〜年下御曹司との政略結婚
ラヴ KAZU
恋愛
忌まわしい過去から抜けられず、恋愛に臆病になっているアラフォー葉村美鈴。
五歳の時の初恋相手との結婚を願っている若き御曹司戸倉慶。
ある日美鈴の父親の会社の借金を支払う代わりに美鈴との政略結婚を申し出た慶。
年下御曹司との政略結婚に幸せを感じることが出来ず、諦めていたが、信じられない慶の愛情に困惑する美鈴。
慶に惹かれる気持ちと過去のトラウマから男性を拒否してしまう身体。
二人の恋の行方は……
【完結】氷の王太子に嫁いだら、毎晩甘やかされすぎて困っています
22時完結
恋愛
王国一の冷血漢と噂される王太子レオナード殿下。
誰に対しても冷たく、感情を見せることがないことから、「氷の王太子」と恐れられている。
そんな彼との政略結婚が決まったのは、公爵家の地味な令嬢リリア。
(殿下は私に興味なんてないはず……)
結婚前はそう思っていたのに――
「リリア、寒くないか?」
「……え?」
「もっとこっちに寄れ。俺の腕の中なら、温かいだろう?」
冷酷なはずの殿下が、新婚初夜から優しすぎる!?
それどころか、毎晩のように甘やかされ、気づけば離してもらえなくなっていた。
「お前の笑顔は俺だけのものだ。他の男に見せるな」
「こんなに可愛いお前を、冷たく扱うわけがないだろう?」
(ちょ、待ってください! 殿下、本当に氷のように冷たい人なんですよね!?)
結婚してみたら、噂とは真逆で、私にだけ甘すぎる旦那様だったようです――!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる