社長は身代わり婚約者を溺愛する

日下奈緒

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第6話 どういう事?

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そういう事は、別に初めてじゃない。

昔、彼氏がいた時に、一人暮らしの部屋に泊まりに行った事もあるし。

でも、相手が信一郎さんとなると、ちょっと違う。


「俺の事、まだそういう風に見れない?」

「いえ、とても……嬉しいです。」

気持ちが通じ合っているなら、身体を重ねたいと思うのは、普通の事。

信一郎さんだって、普通の人なんだから、そういう事考えるのは当たり前じゃない。


「でも、お父さんに娘さんとお付き合いさせて頂いてますって言ってから、君を抱きたかったな。」

「そんな!いいんです。父は、そういうところ、甘いですから。」

お父さんとは、恋愛の話はあまりした事ないけれど、特別厳しい事言われた事ないし。

元彼の時だって、泊まりに行っても、何も言われなかった。

「驚いたな。てっきり箱入り娘だと思っていたのに。」

ドキッとなった。

そうだ。私は、信一郎さんの前では、お淑やかなお嬢様だった。

「……父は、恋愛はしなさいって言う派なんで。結婚までに誰とも付き合うななんて、言われた事ないんです。」

「そっか。今時のお父さんなんだね。」

「はい。」

ははは。芹香のお父さんは、どうなんだろう。

お見合いさせるぐらいだし、芹香が好きな人を隠しているぐらいだから、本当は厳しいのかな。

「じゃあ、俺は芹香を大切にしないとね。」

「はい。大切にしてください。」

そして、二人でふふふと笑った。

「じゃあ、行こうか。」

「はい。」

立ち上がろうとすると、足元がふらついた。

「大丈夫か?芹香。」

「う、うん。」

ワイン飲み過ぎたかな。

真っすぐに歩けない。

「俺に捕まって。」

信一郎さんの腕にしがみ付いて、私は何とかお店の外に出た。


「すみません。こんなになるはずじゃなかったのに。」

「大丈夫だよ、俺がいるから。」

信一郎さんの顔が、ゆらりと揺れる。

「参ったな。一人で帰せないよ。」

信一郎さんはタクシーを呼ぶと、私と一緒に乗った。

「桜町まで。」

「はい。」

酔っている最中の中、聞こえてきた桜町は、芹香の家がある方向だ。

しっかりしないと、大変な事になる。

「信一郎さん、私大丈夫なので、途中で降ろして下さい。」

「ダメ。他の男に襲われたら、どうするの。」

「でも……」

「でもじゃない。君は、俺がそんな薄情な人間だと思っているのか?」

私はううんと、首を振ったけれど。

この後、どうしよう。

運悪く、芹香に会ってしまったら。


そんな事を考えている内に、芹香の家の前に来てしまった。

「芹香、立てる?」

「うん。」

ここは大丈夫ように振舞わないと、今までの事がバレてしまう。

私はタクシーを降りると、信一郎さんに頭を下げた。

「送って頂いて、ありがとうございます。」

「いや、俺こそ飲ませ過ぎた。すまない。」

飲み過ぎたのは、私なのに。

優し過ぎるよ、信一郎さん。


「本当はこのまま、お父さんに会っていきたかったけれど、芹香の体調もあるし、又今度にするよ。」

「うん。おやすみなさい。」

「おやすみ、芹香。」

そう言うと信一郎さんは、私の頬にチュッと、キスをしてくれた。

「信一郎さん……」

「芹香、愛しているよ。」

そして信一郎さんは、タクシーに乗って行ってしまった。
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