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第7話 運命の人
③
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「何?」
芹香は不機嫌な表情をしている。
きっと私が言う事を、分かっているんだろう。
「……もう一度だけ、芹香を名乗らせて欲しいの。」
「えっ?」
「お願い、もう一度だけ。それが終わったら、もう会わないから。」
芹香は困った顔をしていた。
「だから何も、礼奈として会えばいいじゃない。」
「私では、ダメなの。」
貧乏な家の私では、信一郎さんは納得してくれない。
芹香じゃなければ。
お金持ちのお嬢様じゃなければ、信一郎さんは会ってくれない。
「分かった。でも、条件がある。」
「条件?」
芹香は、私に近づいて来た。
「もう一度会った時に、自分の名前を名乗る事。」
「えっ……」
私は息を飲んだ。
「黒崎さんが本当に礼奈の事を気に行っているのなら、お嬢様じゃなくても礼奈に会ってくれるよ。」
「それは……」
「信じないの?黒崎さんの事。」
そう言われて、胸がズキッとした。
私は、信一郎さんの事、信じていない?
「じゃあ、逆に考えてみたら?」
「逆って?」
「黒崎さんが、本当は御曹司じゃなかったとしたら?」
「えっ……」
信一郎さんさんが、庶民の人だったら?
だって、美術館だって、水族館だって、信一郎さんの家のお金で動いていた。
「そんな事は……」
「例えばの話よ。」
例えば、信一郎さんが普通のサラリーマンだったら?
ううん。答えは変わらない。
信一郎さんは、信一郎さんだ。
好きな気持ちは、変わらない。
「どうやら、私が思っていた通りの答えのようだね。」
「芹香……」
「礼奈は、十分魅力的な女性だよ。信一郎さんだって、そう思っている。」
でも、私の心は晴れなかった。
「まあ、ゆっくり考えてよ。」
芹香は、私を玄関から送り出すと、タクシーを呼んでくれた。
「夜道は気を付けてね。」
「……うん。」
タクシーに乗って、私は自分の家までのあっという間の時間を、持て余した。
今すぐに信一郎さんに会って、抱きしめて貰いたい。
「信一郎さん……」
タクシーが私の家の前に着くと、私はそれを降りて、信一郎さんに電話した。
電話は直ぐに繋がった。
『芹香?』
ドキッとした。
ー 自分の名前を名乗って -
まだ、できない。
できないよ、芹香。
「信一郎さん。今、時間大丈夫ですか?」
『ああ、芹香の為だったら、大丈夫にするよ。』
「有難う。」
信一郎さん、やっぱり優しいよね。
その優しさで、芹香だと騙している私を許してくれる?
『芹香?何かあったのか?』
「……ううん。そうだ、今度のデートどうしようね。」
『その事なんだけど……』
信一郎さんが、真剣な話をしようとしているのが、分かった。
『ホテルのスィートを取ろうと思っている。」
「そんな高いところ?いいよ。」
『よくない。そこで、俺達は忘れられない一晩を過ごすんだ。』
胸がドキドキする。
「まさか……」
『そう。俺は芹香を抱く。』
胸が大きく鼓動を打った。
『いいね。』
「……うん。」
『じゃあ、おやすみ。』
「おやすみなさい。」
電話が切れた後も、私の心臓は鼓動を繰り返していた。
信一郎さんに、抱かれる。
それもいいかもしれない。
最後の一晩に、スペシャルな贈り物を。
芹香は不機嫌な表情をしている。
きっと私が言う事を、分かっているんだろう。
「……もう一度だけ、芹香を名乗らせて欲しいの。」
「えっ?」
「お願い、もう一度だけ。それが終わったら、もう会わないから。」
芹香は困った顔をしていた。
「だから何も、礼奈として会えばいいじゃない。」
「私では、ダメなの。」
貧乏な家の私では、信一郎さんは納得してくれない。
芹香じゃなければ。
お金持ちのお嬢様じゃなければ、信一郎さんは会ってくれない。
「分かった。でも、条件がある。」
「条件?」
芹香は、私に近づいて来た。
「もう一度会った時に、自分の名前を名乗る事。」
「えっ……」
私は息を飲んだ。
「黒崎さんが本当に礼奈の事を気に行っているのなら、お嬢様じゃなくても礼奈に会ってくれるよ。」
「それは……」
「信じないの?黒崎さんの事。」
そう言われて、胸がズキッとした。
私は、信一郎さんの事、信じていない?
「じゃあ、逆に考えてみたら?」
「逆って?」
「黒崎さんが、本当は御曹司じゃなかったとしたら?」
「えっ……」
信一郎さんさんが、庶民の人だったら?
だって、美術館だって、水族館だって、信一郎さんの家のお金で動いていた。
「そんな事は……」
「例えばの話よ。」
例えば、信一郎さんが普通のサラリーマンだったら?
ううん。答えは変わらない。
信一郎さんは、信一郎さんだ。
好きな気持ちは、変わらない。
「どうやら、私が思っていた通りの答えのようだね。」
「芹香……」
「礼奈は、十分魅力的な女性だよ。信一郎さんだって、そう思っている。」
でも、私の心は晴れなかった。
「まあ、ゆっくり考えてよ。」
芹香は、私を玄関から送り出すと、タクシーを呼んでくれた。
「夜道は気を付けてね。」
「……うん。」
タクシーに乗って、私は自分の家までのあっという間の時間を、持て余した。
今すぐに信一郎さんに会って、抱きしめて貰いたい。
「信一郎さん……」
タクシーが私の家の前に着くと、私はそれを降りて、信一郎さんに電話した。
電話は直ぐに繋がった。
『芹香?』
ドキッとした。
ー 自分の名前を名乗って -
まだ、できない。
できないよ、芹香。
「信一郎さん。今、時間大丈夫ですか?」
『ああ、芹香の為だったら、大丈夫にするよ。』
「有難う。」
信一郎さん、やっぱり優しいよね。
その優しさで、芹香だと騙している私を許してくれる?
『芹香?何かあったのか?』
「……ううん。そうだ、今度のデートどうしようね。」
『その事なんだけど……』
信一郎さんが、真剣な話をしようとしているのが、分かった。
『ホテルのスィートを取ろうと思っている。」
「そんな高いところ?いいよ。」
『よくない。そこで、俺達は忘れられない一晩を過ごすんだ。』
胸がドキドキする。
「まさか……」
『そう。俺は芹香を抱く。』
胸が大きく鼓動を打った。
『いいね。』
「……うん。」
『じゃあ、おやすみ。』
「おやすみなさい。」
電話が切れた後も、私の心臓は鼓動を繰り返していた。
信一郎さんに、抱かれる。
それもいいかもしれない。
最後の一晩に、スペシャルな贈り物を。
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