社長は身代わり婚約者を溺愛する

日下奈緒

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第13話 俺じゃダメ?

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その日の夕食。

お父さんが、私の方をチラチラと見ていた。

「どうしたの?お父さん。さっきから礼奈の方ばかり見て。」

お母さんがたまらなくなって、注意した。

「いやな。礼奈が男と別れたって言うから。」

「えっ⁉いつ⁉」

お母さんもすごく驚いている。

「今日。」

「どうして⁉」

何だか、お母さんの方が食いつきがいい。

私は、この際だから本当の事を言おうと思った。

「私の彼氏、社長さんなの。」

「社長って……どうやって出会うんだ?」

「さあ?」

お父さんもお母さんも、そこから聞くんだ。

「芹香のお見合い、断ってって言われて行ったらいたのよ。」

「芹香ちゃんのお見合いに、あんたが行ったの?」

いちいち、驚くよね。お母さん。

「それで、いい雰囲気になって付き合ったんだけど、結局お嬢様じゃないとダメだって。」

「何だ!それは!」

お父さんが、箸を投げ捨てた。

「悪かったな!ウチは貧乏な工場経営で!」

「ちょっと、お父さん。」

私の代わりに怒ってくれるお父さんを、お母さんが抑える。

「それで?その事に礼奈は、納得したの?」

「するしかないよね。」

お母さんは、はぁーとため息をついた。

「どうして、しがみ付かなかったの?」

「しがみ付いてどうするの?」

「好きだったんでしょ。」

お母さんの言葉に、私の手が止まった。


「デートに行く礼奈の姿見てて思った。ああ、この子。今精一杯恋をしているんだって。」

思い返すと、デートに行く服を買いに行った事もあった。

「何だかお母さんまで、恋してるみたいな気がして、嬉しかったのよ。」

「それは、有難う。」

でも、その恋は終わってしまった。

結局私は、芹香に負けたのだ。

「ご馳走様。」

私は自分の食べたお皿を片付けた。

「ちょっと、外に出てきます。」

「今日は、どこに行くの?」

お母さんは、私がどこに出かけるのか、心配らしい。

「芹香とお茶。」

「こんな時に、芹香ちゃんと会うの?」


お母さんは、芹香のせいで私が信一郎さんと別れたと思っているらしい。

「芹香は、関係ないから。」

そう言って私は自分の家を出た。

そう。芹香のせいで、別れた訳じゃない。

私がずっと、芹香の真似をしていたのが悪かったのだ。

そう思うしかなかった。


芹香との待ち合わせは、いつものカフェにした。

「あっ、礼奈。」

何も知らない芹香は、いつもの笑顔だ。

「待たせてごめん。」

「ううん。私も今、来たところだし。」

そして、芹香が注文したコーヒーが運ばれてきた。

「私も、同じものをお願いします。」

「かしこまりました。」

店員さんが行った後、芹香は私に顔を近づけた。

「ねえ、黒崎さんとの事は、どうなってるの?」
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