社長は身代わり婚約者を溺愛する

日下奈緒

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第14話 君が好き

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「別れた彼氏よ。」

「はあ?あんたが⁉」

お父さんは信一郎さんを見ると、頭からつま先までジローっと見つめた。

「で?別れた男が、また何の用事だ。」

「礼奈さんとの、これからの事です。」

「だから、別れたんだろう。」

お父さんは、不思議がっている。

それを見かねたお母さんが、お父さんの腕を引っ張った。

「お父さん、礼奈とやり直したいのよ。邪魔しないで。」

「はあ?やり直したい?」

お父さんは、お母さんに連れて行かれ、私の側には信一郎さんだけが残った。


「……やり直したいって、何ですか。」

「礼奈、悪かった。この通りだ。」

信一郎さんが、私に頭を下げている。

「ちょっと止めて下さい。社長が社員に頭を下げるなんて。」

「今は社長じゃない。ただ一人の男だ。」

そう言うところ、嫌いになれない。

もう一緒にいられないんだから、止めてよ。そういう事。

「礼奈。俺、はっきり気づいたんだ。」

「何をですか。」

わざわざここまで来てくれたのに、冷たい態度だって分かってる。

でも、そうでもしないと、しがみ付いてしまいそうだから。

「愛しているのは、礼奈だけだって。」

「でも、結婚はできないんですよね。やり直しても無意味じゃないですか。」

すると信一郎さんは、私の手を握った。

「礼奈は、それでいいのか。」

「そう言われても……」

「俺と、このまま別れてもいいのか?」


ここで、嫌だって言えたら、どんなに可愛い女なんだろう。

残念ながら、私はそんな女じゃない。


「いつかは別れなきゃいけないのなら、今の方がいいです。」

「礼奈。」

その瞬間、信一郎さんに抱きしめられた。

「俺は、礼奈と別れない。」

「信一郎さん……」

「ずっと、一緒にいる。そう決めたんだ。」

信一郎さんの温もりが、私に伝わってくる。

「貧乏な娘でも?」

「礼奈は礼奈だよ。関係ない。」

嬉しくて、涙が出た。

信一郎さん。その言葉、一番……

欲しかったものだよ。


私は信一郎さんの身体に、腕を回した。

「礼奈……」

信一郎さんの顔が、近くにある。

あっ……キスする……?


「仲直りしたのか?」

私と信一郎さんの身体が、ビクッとなる。

「お、お父さんっ!」

私達は慌てて、身体を放した。

「やり直したのかって、聞いてるんだよ。」

「は、はい!」

信一郎さん、お父さんの前で緊張している。

「ふーん。礼奈は、いいのか?」

「あっ……」

私は、信一郎さんをふと見た。

その時、信一郎さんは温かい笑顔をくれた。


この笑顔……最初に会った時と同じだ。


「うん。そうだね。」
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